豊田章男が孫正義にどうしても頼りたい事情

ソフトバンクに求める「トヨタにはない」能力

このトヨタコネクティッドの前身、トヨタメディアサービス社は2000年に当時はまだ、ヒラの取締役だった豊田章男・現社長の肝煎りで設立された。トヨタが筆頭株主で、アメリカのマイクロソフトとセールスフォース・ドットコムが出資している。クラウド技術などはマイクロソフト社のものを使っている。

トヨタコネクティッドは、インフラづくりの役割も担っている。ビッグデータを解析し、交通安全などにも役立てているのだ。たとえば、冬場、指定された地域でABS(アンチロックブレーキシステム)が作動すると、その位置情報を、無線を通じてセンターが即時に吸い上げ、スリップする危険性がある地点として、他のドライバーへカーナビを通じて情報提供する。

グローバル展開を進めて、2016年にはアメリカ・テキサス州にマイクロソフトと共同で現地法人を設立、クルマのスマートシティへの統合などの事業を展開している。ビッグデータを活用して、一律ではなく、実際の運転パターンに合わせて保険料を決めるサービスも開始する計画だ。

ただ、トヨタのこうした取り組みは、あくまでトヨタ車のみからのビッグデータ取得となる。ターゲットを拡大していくには、他社との連携も重要となる。株主として世界のライドシェア業界を牛耳るソフトバンクと組んだ狙いの一つもこの辺にある。

提携はトヨタからソフトバンクに打診した

そして今回の提携はトヨタからソフトバンクに打診した。孫氏自身も「マジかと思って驚いた」と、10月4日の記者会見で打ち明けた。豊田氏も「トヨタとソフトバンクは相性が悪いという噂がありましたが……」と語った。トップ自身が両社はこれまで疎遠な関係で企業体質が合わないと認めたのも同然だ。

実は筆者は数年前、豊田氏の側近の一人からこんな言葉を聞いたことがある。「うちの社長が一番嫌いな経営者は孫正義だ」。なぜですか?と聞くと。「トヨタは育てる文化を大事にする。ソフトバンクは育てずに他社を買収して大きくなった。そしていつか純利益でトヨタを追い抜くと公言しているところが気に食わない」とはっきり言った。会見の場で豊田氏が「相性が悪い噂がある」と言ったのは、ご自身が「震源」なのである。

嫌いな会社にトヨタみずからすり寄ったのには理由がある。この2~3年で自動車産業を取り巻く環境が大きく変化し、従来の価値観だけでビジネスを展開していれば劣後するリスクが高まってきたからだ。豊田氏はこの現状を「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬかの戦い」とたとえているほどだ。

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