豊田章男が孫正義にどうしても頼りたい事情

ソフトバンクに求める「トヨタにはない」能力

ソフトバンクとの提携は、トヨタの危機感の表れでもある。この点についても解説しよう。トヨタの危機感は大きく次の2つだ。

①自前主義の限界

②大衆車のブランド消滅

自前主義の限界についてのポイントとしては、1兆円を超える研究開発予算を持つトヨタでも「クルマのスマホ化」など次世代技術への投資が大きな負担になっていることが挙げられる。研究開発の効率化が経営上の課題になっているのだ。これから競合相手となるグーグルの親会社であるアルファベットはトヨタの1.8倍、アマゾンは2.3倍の研究開発費を持っていることもトヨタは強く意識している。こうした課題をクリアしていくには、強いところを「持ち寄る」的な発想で外部企業との連携は不可欠と判断、これがソフトバンクとの提携につながった。

大衆車ブランドの消滅は、まだ現実には起こっていない問題だが、これから十分に起こりうることだ。

保有するより移動手段のサービスとしたほうが効率的

シェア経済の普及によってクルマを買わない人が増え始めている。サービスのプロバイダーであるカーシェアサービス会社から15分単位で必要なときにクルマを借りる。まったくクルマが要らないのではなく、必要なときにクルマがあれば良く、移動手段を自前で保有するのではなく、移動手段をサービスとして受けたほうが効率的という発想だ。税金、車検などの維持管理コストも不要となる。

こうした消費者との接点は、メーカーでも販売会社でもなく、プロバイダーだ。このプロバイダーを含め、サービスのビジネスモデル全体を構築するプラットフォーマーにあらゆる顧客情報などのデータが集まる。

そして、カーシェアを重用する消費者は、クルマのブランドやスペックなどはあまり気にしない。むしろサービス料金のほうを気にする。このため、サービス会社は過剰な機能は排除して安いシンプルなクルマをメーカーに求めてくる傾向が強まる。カーシェアの領域では、いずれメーカーブランドではなく、プロバイダーブランドのクルマが登場する可能性もある。メーカーがプロバイダーの下請けになってしまうのだ。

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