この構造は、かつて家電業界で起きたことと類似している。ヤマダ電機などの大手安売り流通が台頭すると、流通側からスペックや価格が指定され、それをメーカーが呑む形となった。この結果、家電産業の主導権はメーカーから流通に移った。冷蔵庫、テレビ、洗濯機などの家電製品はメーカーごとの「差異」はそれほどなく、消費者から見れば「どれを買ってもほぼ同じ」なので、結局は価格勝負になってしまった。
大衆車の領域でも「家電化」が進もうとしている。一般論として自動車メーカーは、過剰なスペックのクルマを市場に押し出し、高い価格を維持してきた。バブル崩壊後の日本経済でデフレが進んで、あらゆる物価が下がってきたのに、クルマの価格が高止まりしているのは、主にこうした理由からだ。大衆車にカーシェアが普及すれば、この「作戦」は通用しづらくなる。
トヨタ自身がプラットフォーマーを目指す
今後起こりうるこうした課題をクリアしていくためには、何が必要か。その解の一つが、トヨタ自身がプラットフォーマーになることだ。家電業界では、パナソニックもシャープもソニーも「ヤマダ電機」にはなれなかったが、トヨタは「大衆車のヤマダ電機」になろうとしているのだ。
「モビリティサービスの会社に変身する」と豊田氏が公言しているのも、その流れに対応するためだ。ただ、トヨタはモノづくりの会社としての力は世界で一流だが、プラットフォーマーになるためには、業界の垣根を超えてグローバルに連携して仲間づくりをしていくノウハウが求められる。この点は、「人たらし」と言われて世界中の経営者にパイプがある孫氏率いるソフトバンクに軍配が上がる。
トヨタはプラットフォーマーになるために、自社にない能力をソフトバンクに求めたとも見て取れる。
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