豊田章男が孫正義にどうしても頼りたい事情 ソフトバンクに求める「トヨタにはない」能力

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この構造は、かつて家電業界で起きたことと類似している。ヤマダ電機などの大手安売り流通が台頭すると、流通側からスペックや価格が指定され、それをメーカーが呑む形となった。この結果、家電産業の主導権はメーカーから流通に移った。冷蔵庫、テレビ、洗濯機などの家電製品はメーカーごとの「差異」はそれほどなく、消費者から見れば「どれを買ってもほぼ同じ」なので、結局は価格勝負になってしまった。

大衆車の領域でも「家電化」が進もうとしている。一般論として自動車メーカーは、過剰なスペックのクルマを市場に押し出し、高い価格を維持してきた。バブル崩壊後の日本経済でデフレが進んで、あらゆる物価が下がってきたのに、クルマの価格が高止まりしているのは、主にこうした理由からだ。大衆車にカーシェアが普及すれば、この「作戦」は通用しづらくなる。

トヨタ自身がプラットフォーマーを目指す

今後起こりうるこうした課題をクリアしていくためには、何が必要か。その解の一つが、トヨタ自身がプラットフォーマーになることだ。家電業界では、パナソニックもシャープもソニーも「ヤマダ電機」にはなれなかったが、トヨタは「大衆車のヤマダ電機」になろうとしているのだ。

「モビリティサービスの会社に変身する」と豊田氏が公言しているのも、その流れに対応するためだ。ただ、トヨタはモノづくりの会社としての力は世界で一流だが、プラットフォーマーになるためには、業界の垣根を超えてグローバルに連携して仲間づくりをしていくノウハウが求められる。この点は、「人たらし」と言われて世界中の経営者にパイプがある孫氏率いるソフトバンクに軍配が上がる。

トヨタはプラットフォーマーになるために、自社にない能力をソフトバンクに求めたとも見て取れる。

井上 久男 ジャーナリスト

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いのうえ ひさお / Hisao Inoue

1964年生まれ。1988年九州大卒。NECを経て1992年朝日新聞社に中途入社。経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。現在は主に企業経営や農業経営を取材し、講談社や文藝春秋、東洋経済新報社などの各種媒体で執筆するほか、講演活動も行っている。主な著書に『自動車会社が消える日』(文春新書)、『会社に頼らないで一生働き続ける技術 生涯現役四十歳定年のススメ』(プレジデント社)、『メイドインジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『トヨタ愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)、『トヨタ・ショック』(講談社、共編著)。2005年大阪市立大修士課程(社会人大学院)修了、2010年同博士課程単位取得退学。2016年4月から福岡県豊前市政策アドバイザーに就任。

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