10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクは新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ=MONET)を設立し、2018年度内に事業を開始すると発表した。今回はその狙いについて考えてみたい。
難しく考えれば果てしなく難しいが、実はその真ん中にあるものを理解してしまえば話は簡単だ。
中心座標となるのは、今年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でトヨタが発表した「e-Palette(イーパレット)」である。
トヨタは自動車を製造・販売する事業から、モビリティにひも付くあらゆるサービスを提供する会社への方針転換を発表した。自動車というハードウエアではなく、それがもたらすサービスでの収益にフォーカスする。この考え方をモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)と呼ぶ。クルマという移動体が実現できるサービスを売れば、クルマ単体を売るより付加価値が上がる。サービス構築に掛かる費用の大部分を多くのユーザーで割り勘にできるため、導入する側はコストが下がり、売る側はより儲かる。
まだ誰も到達していない"MaaS"というサービス事業
ここまではすでにあらかたご存じの人も多いだろうが、もうひとつ理解しやすくするための補助線が必要だ。e-Paletteが目指すMaaS事業は、本当の意味ではまだ世界中の誰も到達していないサービス事業であるという点だ。
もちろんMaaSのポテンシャルの一部を事業化している先例はある。たとえばUber(ウーバー)に代表されるカーシェアリングやライドシェアリングである。しかし、現時点でUberが提供しているサービスはMaaSのほんの1合目にすぎない。
「客がどこからどこへ行きたいか?」――。そぎ落としていけば現在システム側がやっているのはこれだけだ。もちろん、より早く客の元に駆けつけたり、料金を知らせたり、アプリ上で決済したりと細かい機能はあるが、どれも手のつけ方がわからないような高いハードルではない。
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