たとえば顧客があるメーカーの服を買って気に入っているとすれば、そのメーカーの服のサイズこそが顧客の納得するサイズであり、それは他社製品ではどういうサイズになるのかを判別しなくてはならない。そういう絶対的なデータをそろえるか、あるいはZOZO TOWNの採寸ボディスーツのようなやり方で実寸を測ってマッチングするシステム構築をするなど、ひとつのビジネスモデルを作るだけでも大変な手間がかかる。
トヨタがCESで発表した計画では、e-Paletteはそれぞれのサービス事業者向けに機能をカスタマイズして提供することになっていたが、移動空間としてのプラットフォームだけ用意して「あとは個社でお願いします」でMaaSが回るわけがない。そこはトヨタがある程度手の内を明かしてでも、サービス事業者が望むシステムを提供できるようにしなくては、サービス事業者にとって負荷が高すぎてMaaSは実現できない。
e-Paletteの空間に乗せるサービス事業を構築するために、トヨタは必要とされるさまざまな技術を持つ企業と地道に提携を進めていた。現時点では、その多くは事業展開系よりもe-Palette本体の自動運転機能に関するものがメインではあるが、そうやってめぼしい技術を持つ会社と話を進めていくと、それらの会社の株主名簿の筆頭に書かれている名前は、みなソフトバンクだった。トヨタは最速でオリンピックの開催に合わせ、e-Paletteを稼働させたい。だとすれば、すでに多くの企業を支配下に置いているソフトバンクと統括契約をしてしまったほうが早い。
すでにトヨタにとって自明であったのは、本格的にMaaS事業をスタートするには、プラットフォームを作るトヨタがサービス事業会社と直接取引をしても難しく、e-Paletteを作る側と使う側の間に、サービス企画とシステム提案、営業、ファイナンス、運営代行、継続的な保守などを行う専門のビジネスマネジメント会社が必要であるということだった。
ソフトバンク側から見るMaaS事業
実はソフトバンク側はMaaS事業が新たな大革命であると見込んで、MaaSの構築に必要な革新技術を持つ会社に次々と資本を入れ、シナジーを持たせようとしてきたが、肝心の車両生産の部分でケタ違いの大投資が必要になるのはあまりにも効率が悪い。さらに事業を回していくために不可欠なハードウエアのサービス拠点の整備などを始めれば、金がいくらあっても足りるわけがない。
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