トランプ大統領が増幅した金融市場の変動性 米中経済大国の衝突が破壊する長すぎた安定

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今後のリスクはいくつもある。まずは新興国からの資金流出。アルゼンチンやトルコのソブリン危機などがすでに顕在化している。欧州でもポピュリスト政権の台頭で財政規律が緩むのではないかと懸念されるイタリア国債の金利が上昇し、現状のトリプルBから格下げの可能性が高まっている。英国のEU(欧州連合)離脱も交渉が難航している。

最大の懸念は、世界の工場として拡大してきた中国経済に、トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争の影響が出てきたことだ。年率6%の成長率を死守するためにインフラ投資の積み増しを発表しているが、そもそも中国国内は過剰設備気味だ。

チャイナショックの再来が懸念される

加えて10月7日に中国人民銀行(中央銀行)が預金準備率を1.0%引き下げることを決定、内需刺激策に打って出たが、思惑に相違して1ドル=6.9元を突破するなど、人民元安を招いている。歯止めをかけるためにドル買い元売り介入が続くと、外貨準備が減少していく。前出の藤戸氏は、「上海株はすでに大幅に下げて2016年1月のチャイナショックの安値を切った。金融市場はチャイナショックの再来に脅えている」と警告する。

中国の9月のPMI(製造業購買担当者指数、国家統計局の数値)は50.8でまだ好不況の分かれ目とされる50を辛うじて上回っているが、8月の51.3から下がった。中国の製造業の陰りはドイツや日本などの中国向け電子部品や資本財の需要を冷やすことになる。さらには、世界的な貿易の縮小という負のスパイラルが、トランプ大統領が打ち出した景気刺激策の切れる2019年後半、ブーメランのようにアメリカにはね返るリスクが高まる。

トランプ氏が金融市場のボラティリティ(変動性)を呼び戻したといえそうだ。長期金利が上昇すれば、信用リスクや期間リスクのプレミアムも上昇する。アメリカのCPI発表を乗り越えても、週明けはイタリアの予算案や英国のEUとの離脱交渉が控える。当面、市場の緊張が続きそうだ。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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