日本に「パン留学」するアジア人たちの本音 製パンを学ぶ技能実習生急増の背景

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一方、韓国・京畿道から来たグ・ヨンモさんは、母と伯父がパン屋を開いていて、高校在学時から日本に留学しようと決めていた20歳の男性。「韓国より日本のほうが、技術が高いから留学しようと思いました。日本菓子専門学校は外部のパン屋をしている先生からも学べるし、実習が多いところがいいです。最初はわからない言葉も多かったけれど、今は大丈夫です。学生もみんな優しい。韓国にいるより楽しいです」と話す。

韓国にいるより楽しいと話すグさん(写真:編集部撮影)

「韓国は菓子パン・総菜パンが中心で、最近は日本と変わらないレベルのパンが並んでいます。また台湾でもパンを食べる人が増えた。中国では北京・上海・広州の大都会でのパンの品質向上が著しい」と、同校教育局局長の鈴木信明氏は分析する。「でも、日本のほうが、技術が高いので学びたい学生が来る。学校のホームページに中国語・韓国語版の入学案内も用意していますので、それを見つけて来る学生や、日本に語学留学してからパンを学びたいと考え、日本語学校の先生に聞くなどして入ってくる人が多いです」。

日本には独自のパン文化がある

また鈴木氏は「ヨーロッパは食事としてのパンだから流行があまりない。でも、日本では売るために次々と新商品を出すので、日本で学びたいと学生が考える」とも見る。

日本では、主食の中心はコメのご飯なので、パンはサブ的な位置づけになる。おやつとしてパンを食べる人も多い。そのため、独自の菓子パン・総菜パンが発達した。定番だけでなく、遊びの要素が求められるおやつだからこそ、次々と新商品が開発されて客を引きつける構造になっている。アジアもコメが主食のため、若者たちは土壌が共通している日本で製パン技術を学ぼうと考えるのだ。

留学生を受け入れているもう1つの専門学校が、大阪・阿倍野に拠点を置く、日本最大規模を誇る辻調グループである。辻製菓専門学校では、洋菓子・和菓子・製パンを2年間で学べる。2017年から、2年次にコースが分かれるシステムを採用し、製パンのみを学べるブーランジェクラスができた。そのクラスに在籍する一期生は、34人のうち9人が留学生と、こちらも約4分の1を留学生が占める。

去年までのパン職人を目指していた留学生数はわからないが、辻製菓専門学校に留学生が最初に来たのは2004年ごろ。2009年に校長が韓国のテレビ番組に出演したことから、2010年に韓国人留学生が急に増え、製菓の留学生総数は31人になった。以降、留学生の数は増え続けている。

今年ブーランジェクラスに入った9人の内訳は、台湾5人、韓国2人、中国2人で、やはり東アジアばかりだ。製菓や調理のコースには、タイやインドネシア、シンガポールなど東南アジアからの留学生も少数ながらいるという。

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