元DJが作る「地産地消パン」、その究極の原料 三浦海岸「充麦」は小麦まで自家製!

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充麦の店主、䕃山光洋氏。自らパン屋を始めようと考えたきっかけは、フランスでのある体験だった(撮影:今井康一)

神奈川県三浦市。京浜急行三崎口駅から歩いて20分ほどのところに、近所で評判になっているパン屋がある。2008年に開業した「三浦パン屋 充麦(みつむぎ)」だ。古い店舗を改装したという小さな店にもかかわらず、普段は地元の人でにぎわい、週末にもなると東京から「パン好き」がわざわざやってくる。

店に入ると、聞こえてくるのはヒップホップ。パン屋らしからぬ音楽に驚くが、目の前のアンティーク風の大きな台には、バケットなどのほかに、「三浦山本養鶏の卵を使ったクリームパン」や、「横須賀松坂屋のウインナードッグ」「三浦産ポロネギとブルーチーズと柚子胡椒」など、地元産の素材を使ったパンが並ぶ。が、充麦が珍しいのはこの点にとどまらない。この店では何と、パンに使う小麦まで自ら生産しているのだ。

バンドマンからDJ、パン屋へ

店を営むのは、䕃山光洋氏(42)。三浦市のお隣、横須賀市の出身だ。高校時代にバンドを始め、専門学校時代は地元横須賀の繁華街、ドブ板通りでクラブDJをやっていた。25歳のときに「何か作る仕事をしたい」と、実家近くのパン屋で働き始めた。30歳でその店を辞め、改めて「自分にしかできない仕事」を考えようと、ヨーロッパを旅した折に出会いがあった。

フランス、アヴィニヨンで道に迷っていたとき、現地在住の日本人男性に声をかけられた。事情を話すと、友人のパン屋へ連れて行ってくれた。そこで、ある衝撃を受ける。市内から車で1時間半かけて着いた山間部のパン屋の店主が、「このパンに使っている小麦は、隣の農家が作ったもの」と教えてくれたのだ。䕃山氏が働いていた店では、製粉会社から仕入れた大量生産の小麦を使うことが当たり前だった。

この経験から「自分で作った小麦でパンを作りたい」と一念発起。幸い、三浦市にある妻の実家が農家だった。義父から余っている畑を借りたのが、旅から帰ってすぐの2005年。しかし、義父に小麦栽培の経験はなかった。三浦市の農業は、ずいぶん前から高く売れる野菜栽培にシフトし、小麦生産が途絶えていたのだ。

農業技術センター三浦半島地区事務所へ相談に行ったところ、「パン用のニシノカオリという小麦があるから蒔(ま)いてみる?」と職員に言われた。ニシノカオリは九州沖縄農研センターが1999年に開発したもの。タンパク質の含有量が多いほか、病気になりにくく倒伏しにくい特徴を持つ。

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