日本に「パン留学」するアジア人たちの本音 製パンを学ぶ技能実習生急増の背景

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アジアへ頻繁に出掛けるという同校企画部の渡邉志保氏は、「韓国は最近カフェ文化が定着してきていて、店構えがヨーロッパ風のカフェもあります。前はコーヒーしか置いていなかったのが、今はパンもある。そして普通においしいです。台湾でもパンの需要は確実に高まっています。辻製菓専門学校に在籍する台湾人留学生は2015年には26人でしたが、今年は51人。中国も10人が37人にまで増えました」と話す。

「留学生に動機を聞くと、日本は近いし体系的に学べる。また、もともとパンがなかったのに取り入れて定着しているプロセス自体も学びたい、という学生が結構います。また、衛生基準が高いので、日本の免許は外国では通用しないのにハクがつくからと、製菓衛生師の資格などを取って帰る人も多いです。日本の技術力は高いと皆言いますね」(渡邉氏)

来年度は留学生が増える見込み

これは、日本菓子専門学校でも同様だが、生活費と学費と高いお金を投資して留学している学生たちは、モチベーションが高く授業でも積極的に質問するので、日本人の学生たちも刺激を受けて熱心に学ぶプラスの効果があるという。

渡邉氏は「日本人も自然に引き上げられてレベルが高くなるので、留学生にはいてほしいと思います。グループに分けて作業させると、リーダーに名乗りを上げるのは留学生です」と語る。

辻調グループでは、現在来年度の学生の募集を始めている。今年は製菓に入ってきた留学生は93人だが、まだまだ増えそうという手応えがあるという。日本菓子専門学校でも、日本語学校在籍者を集めた留学生向け進学相談会に行くと、東南アジア出身者などの関心が高いと感じている。日本人の若者が少子化で減っていることもあり、英語版の案内を作ることも検討していると聞いた。アジアからのパンの留学生はますます増えていきそうだ。

【2018年10月13日10時00分追記】初出時、来年度の留学生の数は「倍増しそう」とありましたが、「まだまだ増えそう」と修正いたしました。関係者の皆さまに深くお詫び申し上げます。

アジア諸国・地域の経済発展の目覚ましさは、報道などで知っている人も多いだろう。経済が豊かになると西洋文化を取り入れようとするのは、日本と同じらしい。日本の場合、欧米まで行き学んだうえでその文化を吸収したが、ほかのアジア諸国にとって西洋文化を最初に学ぶ場所は、アジア風にアレンジした日本になる。距離が近いことも魅力のようだ。

冒頭のクープ・デュ・モンドで優勝した韓国チームの1人は日本菓子専門学校出身者である。日本の技術を導入してどんどんおいしくなっているという、東アジアのパン。もしかすると、アジアで生まれた独自の菓子パン・総菜パンを、日本人が珍しがって食べる、そんな日も来るかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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