日本に「パン留学」するアジア人たちの本音 製パンを学ぶ技能実習生急増の背景

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実際のところ、パンの業界にはどの程度技能実習生が入っているのだろうか。筆者が、パン業界の人たちから、「現場で働く外国人が増えている」といううわさを聞いたのは去年。しかし、取材に協力してくれるパン屋を見つけるのには苦労した。また、どのぐらい増えているのか数字を持っていると聞き、問い合わせた東京パン連盟工業協同組合からは、結局回答が得られなかった。

公的なデータを探してみたところ、法務省による、2~3年目の技能実習生数の推移を調べたデータが見つかった。それによると、パン製造を含む食品製造関係の技能実習生数は、2007年から2015年までは横ばいだったが、2015年から急激に増え、2017年は2015年の2倍弱にも増加している。

2年前から中国人留学生が増えている

彼らをすでに受け入れた経験がある現場を探したところ、専門学校2校から話を聞くことができた。その1つ、東京・二子玉川にある日本菓子専門学校は、製菓・パンの2つのコースを持つ1年制の専修学校だ。パンを学ぶ留学生が最初に来たのは2001年。韓国人の女性が語学留学で日本に来てパンを食べておいしさに感動し、ぜひ勉強したいと入学してきたという。

製パン技術を学ぶために来日する韓国人が増え始めたのは2005年ごろから。以来、平均して毎年5~6人が入学する。男女比率は半々程度。2012年ごろから台湾人留学生も来るようになった。韓国人留学生は、東日本大震災とウォン安の影響で減っているが、2年前から中国から来る留学生が急に増えた結果、留学生総数が伸びたという。

今年在籍している学生は、韓国人2人、中国人6人の8人である。製パン技術学科の在籍者数が31人なので、留学生が4分の1を占める計算になる。

留学生の1人、中国・深圳から来た女性の王尊さんは35歳。IT企業で働いたが疲弊して退職。パンが好きなので、パン屋で数年働いた結果、これは一生の仕事だと思ったという。「でもパン屋は専門的な知識は教えてくれない。大学では知識を学べますが実技は少ない。日本の専門学校では両方学ぶことができるので留学しました。それに日本は、ご飯の国でパンに対する趣味が中国と近いと思います。帰国後は、日本で学んだことを伝えるパン教室を開きたいです」と話す。

帰国後は、中国でパン教室を開きたいという王さん(写真:編集部撮影)
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