安倍「史上最長政権」を待ち受ける落とし穴 求心力低下が必至、改憲も厳しい

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首相は悲願の憲法改正実現のため、臨時国会での自民党改憲案提出を目指すが、与党・公明党の慎重姿勢は変わらず、野党側も「安倍政権での改憲は許さない」と徹底抗戦の構えだ。このため、自民党内でも来年の通常国会での改憲発議は「絶望的」(長老)との見方が広がっている。

安倍政権を取り巻く環境のこうした悪化の最大要因は、来夏の参院選で自民の苦戦が確実視されていることだ。今回改選される議員が当選した2013年参院選では、自民党が現行制度では最多の65議席(選挙区47議席、比例区18議席)を獲得して大勝した。特に1人区(31)では29勝2敗と野党を圧倒し、結党以来初の現職候補の全員当選も果たした。その結果、公明党も加えた与党の議席は非改選も合わせて過半数(122議席)を大きく上回る135議席となり、衆参両院のねじれも解消されて、現在の「安倍1強」が始まった。

ただ、その反動もあって、来夏の参院選では自民党の議席減は避けられない状況だ。特に、2016年参院選から32に増えた1人区は、立憲民主など主要野党が「統一候補」を擁立すれば、「2013年のような大勝は不可能」(自民選対)とされる。自民党は56議席を獲得した2016年参院選でも東北を中心とした野党統一候補に11の1人区で競り負けたからだ。

民進党分裂で多党化した主要野党は、「バラバラでは戦えない」との共通認識から、来夏の参院選では全ての1人区での統一候補擁立を目指している。それが実現すれば、いわゆる「もり・かけ疑惑」などで2016年参院選のときより内閣支持率も低下しているだけに、選挙アナリストらの情勢分析でも「1人区は与野党半々」との予測が多数派だ。そうなれば自民党は1人区だけで10以上の議席減は避けられず、複数区や比例代表でも議席を減らせば、15前後の議席大幅減の可能性もある。

安倍首相は第1次政権での2007年参院選で自民37議席という歴史的惨敗を喫し、同年9月に退陣表明に追い込まれた。12年に一度の統一地方選と参院選が重なる亥年(いどし)特有の選挙事情もあるだけに、首相にとって「12年前の悪夢再来」の不安も拭えない。仮に自民党が50議席台前半にとどまれば、与党の合計議席は参院過半数(124議席)を大きく上回るものの、現在の自民単独過半数と、維新なども含めた参院での「改憲勢力3分の2」を失うのは確実だ。

参院選は「自民50議席」が首相の勝敗ライン

永田町の選挙専門家の間では、来夏参院選での自民党勝敗ラインは「50議席」とされている。124の改選議席に対し、創価学会の強固な支持を持つ公明党が前回と同じ14議席を維持した場合、残る110議席の半分の55議席以上が自民党の「勝利ライン」となり、それを5議席以上減らせば主要野党の合計獲得議席も下回る「敗北ライン」となるからだ。

首相はこれまでの国政選挙では毎回、勝敗ラインを「与党で過半数」としてきた。来夏の参院選での過半数は「定数6増」により63議席となるため、公明党が現状維持とすれば、自民党は48議席以下なら「敗北」となる。ただ、自民50議席で過半数を確保しても、1997年参院選での敗北で即時退陣表明した橋本龍太郎首相(当時・故人)の場合は15議席減だった歴史も踏まえれば、選挙直後の首相の退陣論浮上は避けられない。

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