安倍「史上最長政権」を待ち受ける落とし穴 求心力低下が必至、改憲も厳しい
もちろん、これらの予測は野党統一候補実現が前提だけに、与党内には「最終的に野党がまとまるのは困難」との楽観論もある。だが、主要野党は「野党バラバラで参院選を戦うことはあり得ない」と口を揃えており、1人区だけでなく13ある2~6人区でも統一候補擁立となれば、自民党はさらに苦しくなる。
ただ、自民党は政党支持率で主要野党合計にトリプルスコアに近い大差をつけているため、「2増」となる比例区での議席増を期待している。比例区では複数の有名人候補擁立も検討しているとされるが、「苦しい時のタレント頼みは、有権者に見透かされ、かえって票を減らす」(選挙アナリスト)との指摘もある。
自民党がなんとか50議席台前半に踏みとどまれば政権維持は可能だが、首相の求心力は一気に低下する。その場合、首相が悲願とする憲法改正も「参院の3分2割れ」に直面する。野党の協力が得られない限り、首相の公約でもある自衛隊の憲法9条への明記を盛り込んでの衆参両院での改憲発議は不可能となる。ここにきて、自民党内に来夏の衆参同日選論が浮上しているのは、そうした事態を回避したい政権側の思惑からとみられる。
政権選択選挙となる衆院選を参院との同日選挙にすれば、「主要野党による全面的選挙共闘は困難となり、自民の参院選勝利の道が開ける」(自民選対)という読みからだ。ただ、与党内には「改憲だけの目的で同日選を断行すれば、国民の反発から衆院でも大幅議席減となり、首相の責任論が噴出する」との厳しい見方も少なくない。
首相がなんとか単独での参院選を乗り切っても、次のハードルは10月の消費税10%実施だ。すでに2回先送りした首相だけに、与党内には「3度目の先送り論」も残るが、首相サイドは「今回の先送りは明確な公約違反となる」(側近)との立場で、首相も総裁選などで予定どおりの引き上げを明言してきた。
このため、来年10月以降の景気後退は避けられず、「2020年夏の東京五輪までは何とかしのげても、その後の景気急減速は不可避」(財界首脳)との見方が支配的だ。その場合、首相が目指す「アベノミクスの完結」は困難となり、異次元金融緩和の「出口戦略」に失敗すれば、「経済政策が政権の命取り」(同)ともなりかねない。
「引き際が肝心」な任期3年に
こうしてみると、首相の新たな3年間の任期は、1強維持どころか退陣論に結びつく求心力低下との闘いとなるのは確実だ。参院選の結果で、首相が「政権最大のレガシー(遺産)」と目論む憲法改正が実現困難となれば、「東京五輪後には安倍政権が完全なレームダックになる」(自民長老)ことは避けられないからだ。
今後の政治日程をみると、2021年9月末の首相の任期満了の3週間後に、現在の衆院議員の任期も満了となる。このため首相は今後、第2次政権発足後3度目の解散断行の機会をうかがうことになるが、消費税増税や五輪開催などの今後の重要政治日程からみて「チャンスは来夏の同日選か2年後の五輪直後の2つの選択肢に絞られる」(自民幹部)との見方が支配的だ。
首相にとっての金字塔ともなる「史上最長政権」は2019年11月下旬に実現する。このため、参院選で「改憲勢力3分の2」を失って憲法改正が困難となれば、首相は東京五輪直後に勇退の形で退陣表明し、事実上の後継指名で「キングメーカーの座を狙うのでは」(麻生派幹部)との見方も広がる。
その場合の首相の後継者は岸田文雄政調会長との説もあるが、首相がその前にレームダック化すれば、求心力低下で首相の思惑どおりの展開となる可能性は小さくなる。その一方で五輪直後の解散断行で大幅議席減となれば「即時退陣か1年間の完全なレームダックを余儀なくされる」(自民幹部)ことは避けられず、「退陣後の院政も不可能となる」(同)。首相にとって「引き際が肝心な残り任期3年」(首相経験者)となることは間違いなさそうだ。
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