日産「R35GT-R」は現行型をいつまで続けるか 次期型の情報はまだ聞こえてきていない

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五味:でも、経営陣からしてみたらまっとうな判断だと思いますよ。R35GT-Rはまだ第一線で活躍できるパフォーマンスは持っています。「あのままのカタチでユーザーに売り続けられるメリットがあるのに、廃版にするのか」という話になっちゃう。

日産がGT-Rを出し続けようと思ったら、いずれフルモデルチェンジが必要になるんでしょうけど、たぶん次のモデルは今の価格帯では出せない。特別なプラットフォーム(車台)で造っているし、性能面などを考えたら、もっと高い価格で出さざるをえないからです(編集部注:最新のGT-Rはベース車「ピュアエディション」の車両本体価格が1023万0840円)。

今の日産のブランド力や販売店の店構えなどを考えると、仮に次期型GT-Rが開発されていたとして、それが1500万円ぐらいの価格設定だとしても、R35GT-Rよりももっと売れるかといったら売れません。ならば今のままR35GT-Rをしばらく造り続けたほうが得策となります。

日産がGT-Rをフルモデルチェンジしたとして、その投資分を回収できるビジネスプランは立てられないんじゃないでしょうか。

塩見智(しおみ さとし)/ライター、エディター。1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(撮影:尾形文繁)

塩見:R35GT-Rは発売当初のベースモデルは車両本体価格が800万円を切っていました。フェラーリやポルシェよりもはるかに安かった。この価格帯なら存在する意味が十分にあったと思います。パフォーマンスを考えたら全然安かったじゃないですか。ところが今はもう結構高くなっている。正直、もう台数的には全然相手にされなくなっちゃいました。

五味:クルマ造りは結局、販売力をベースに考えておかないといけないので難しい。フェラーリと同じ性能を持っていても、フェラーリと同じ価格設定で売れますかといったら、日産には難しい。フェラーリが高くても売れるのは、フェラーリのブランドがあり、富裕層との強いパイプを持った販売体制も整っているからです。

塩見:歴史を振り返るとスカイラインGT-Rは1969年に初代がデビューして、2代目は1973年の1年だけ販売されました。それから16年経ってR32GT-Rが復活するワケですが、その間にスカイラインには4気筒エンジンの高性能仕様がありました。それに「GT-R」の名前は冠されなかった。

日産は中途半端な車にはGT-Rブランドを使わなかったんです。日産は今、GT-Rの「ブランド貯金」をどんどん食い潰していっていると思っています。

次世代モデルは現行の延長線上でいいのか?

山本:ただ、GT-Rの歴史を振り返ると、第1世代は桜井眞一郎さん、第2世代は伊藤修令さん、で、第3世代は水野さんと田村さんがそれぞれの開発担当者ですが、意外にクルマに共通項はありません。

初代GT-Rは、レーシングカー用のエンジンを市販用にデチューンした2000cc直列6気筒の自然吸気エンジンを搭載していました。第2世代は、レースで勝つために最適なパッケージングという造り方で、2600cc直列6気筒のツインターボエンジン。R35GT-Rは世界に向けたクルマ造りで3800ccのV型6気筒ツインターボエンジンです。

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