「大卒熟年専業主婦」の上手な離婚の仕方 お金も知識も生かして新たな人生の一歩を

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最後は、お金に戻ります。2人ともお金はあるわけですが、問題はその管理の仕方です。これが3つ目のポイントです。

実は2人とも、お金にはほぼ無頓着で、「毎月夫から生活費として振り込まれるお金をあまり自覚せずに使ってきた」と言います。残った分は貯蓄してはきましたが、そんな調子ですので、税金や社会保険料だけでなく「マネーリテラシー」(お金についての知識)に不安があります。離婚ということになり、今後どのようにお金を管理していくか大きな問題です。

お金の勉強をして高コスト金融商品を買うリスクを遮断

実は、大竹さんには早くも「魔の手」が伸びていました。「今後、お金が足りるか不安だ」となにげなく話した大竹さんに、行きつけの美容室のオーナーが「2人のお金のプロ」を紹介してくれたというのです。1人は普通のFPで、その人からは外貨建て一時払い保険を勧められました。もう1人はIFA(Independent Financial Advisor)という投資アドバイザーで、「ラップ口座」を勧められていました。

商品内容を見ると、両方とも高コストで、運用目的としてふさわしいお金の置き場所ではありません。つまり「売り手にとって販売手数料の大きなうまみのある商品」です。このように、お金の匂いを嗅ぎつけて金融商品を売ろうとする人は、残念ながら後を絶ちません。

この連載でもご紹介している「老後設計の基本公式」で計算すると、大竹さんは今後100歳まで生きたとしても、よほどぜいたくをしなければお金に困ることもないことがわかりました。このように計算してみると、いたずらに不安を持つ必要がないことがわかるケースは多いので、まず計算してみることをお勧めします。

大切なのは、今後長くお金をもたせていくためには「毎月いくらまで使えるか」を知り、そしてもしインフレになった場合に購買力を減らさないために適切な運用をしていくことです。

お金の置き場所は、税制優遇が大きいiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)口座を優先的に、課税口座の順に使います。勧められたような外貨建て一時払い保険やラップ口座でなくとも、もっと低コストで同等程度の運用成果を得ることはできますので「長期で」「分散して」「低コストの商品で」運用をすることの重要性と方法をお伝えしました。契約前でつくづくよかったと思います。

セレブ妻でもそうでなくとも、働いていても働いていなくても、離婚してもしなくても、自分で自分の家計や資産を管理できるだけのマネーリテラシーは必要です。さまざまな家計を見ていると、夫婦のどちらか一方がお金を管理して、生活費なりお小遣いなりを相手に渡しているという家計も少なくはありません。

また連載でも取り上げましたが、収入や貯蓄額を知らない「共働き『ブラックボックス家計』が危険な理由」は要注意です。ぜひそのあり方を見直しましょう。家計をガラス張りにして、必要貯蓄率を求め、効率よく運用しながら、税金や必要経費など支出を適切に管理していきましょう。離婚という人生の一大事で見えてきた3つのポイントですが、パートナーが先立った後、おひとりさまになった時も同じです。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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