日本が「テクノロジー後進国」感半端ない理由 中島聡×夏野剛「エンジニアは自虐をやめろ」
夏野:「僕はエンジニアなのでマーケティングは分からないんで~」とか、「エンジニアなので経営のことはちょっと……」とかね。「エンジニアだから、僕モテないんです」みたいなことまで。「エンジニアだから」を言い訳にすんな!
中島:あのね、私が昔から言っていることがあるんですけど、コードの一行一行というのは経営判断なんですよ。例えば、「このプログラムを使ったら完璧に近いんだけれども、どうしても時間がかかってしまう」という選択肢と、「このプログラミングだったら手っ取り早く動かすことは可能だけれど、いろいろ問題点もある」という選択肢の二択を迫られる場面というのが、エンジニアには常にある。
結局、どっちのコードを使うかで、サービスの質が変わったり、事業の収益に影響が出たりするわけだから、プログラマーの営みというのは、いつも経営判断の繰り返しなんです。科学者とエンジニアの最大の違いがここにあると言ってもいい。その自覚を持ってやっているエンジニアになるのかならないのか。それで大きく違ってくる。
夏野:そこですね! エンジニアでなければ下せない判断というのがあるし、それこそがビジネスの価値、サービスの価値、そのエンジニアの価値を決めるはずなのに、「ボクはエンジニアなのでぇ、どっちが良いのか言ってくれたらぁ、そっちの方向で作りますけどぉ?」なんて言うなよ。変化を生み出す最高のチャンスから、なんで逃げようとするんだよ。
マグマがぶわっと噴き出してくるエンジニアこそ本物
中島:マグマですよ、必要なのはマグマ!
夏野:マグマ!?
中島:才能とかカリスマ性って、みんなどこか「天性のもの」みたいに捉えているじゃないですか? 僕、それ、絶対違うと思っているんです。
ジョブズやイーロン・マスクがスゴイのは、「これはこうじゃなきゃいけないんだ。こうするべきなんだ」という強い想いがマグマのように心の中でうごめいていて、だからこそ「これだ」という突破口が見えた時に、皆を圧倒して巻き込んでしまうくらいの迫力と説得力が出るんだと思うんです。
夏野:なるほど。火山みたいにマグマがぶわっと噴き出してくるエンジニアこそ本物だと。
中島:そう。私はアメリカに住んでいるせいか、時々日本のネットベンチャーに疑問を感じるんですよ。「なぜ、揃いもそろってFXかガチャかビットコインなんだよ」と。
夏野:「楽に金儲けができそうだから」だろうな(苦笑)。
中島:そんなので良いと思っているエンジニアに、世の中を変えたり、未来を創造していくことなんてできるんだろうかと感じてしまうなぁ。
夏野:うん、日本にもスタートアップは増えてきたけれども、上場をゴールだと思っている小賢しいアントレプレナーに、世界を変えることはできない。だからこそ、僕らは「シンギュラリティ」という危機感や切迫感のある言葉を使ったわけだし。
中島:そうですよね。言ってみれば、シンギュラリティは「技術を使えない人は、技術に使われる」という恐ろしいバケモノだけれども、逆にテクノロジーを操る側にまわって、未来を設計して創造する若い世代が育っていってほしい。彼らに新しい時代の主役になってもらうための場として、シンギュラリティ・ソサエティを活用してもらえたら。そう強く願っています。
(取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)
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