中国が躍進「鉄道見本市」、実車展示で存在感 「カーボン製車両」に欧州鉄道関係者も注目
会場では新製品の発表展示だけではなく、日常の取り組みについて展示をしているところもある。ドイツ鉄道のメンテナンスを手掛けるDBサービスは、連日のように被害を受ける落書きをどのように清掃しているのか、古い車両に落書きを施して、実際に薬剤を使って清掃するデモンストレーションを行った。しかも清掃が終わると犯人役が再度、スプレーで落書きを始め、そこへ警官2名がやってきて逮捕する、というパフォーマンスもあった。こうした現場を実際に見る機会はなかなかないので、非常に興味深かった。
このように、今年も興味深い展示が多かったイノトランスだが、一方でこれは業界の「お祭り」であり、関係者は会場で酒や料理を楽しみながら談笑するのが最大の目的だとか、誰もがまだ見ぬ目新しい技術があるわけではないから過剰に期待するものではない、といった少々冷めた声を聞くこともある。
実際、JORSA(日本鉄道システム輸出組合)が集うブースはまさに日本一色で、ブースでは訪問客に対し寿司や和菓子が振る舞われるなど、日本文化を前面に押し出した感じではあるが、鉄道以外の展示がブース中央に位置するというのは、他の国のブースでは見られない光景だ。ここだけ見れば、確かに「お祭り」なのかもしれない。
実物に触れてわかることは多い
だが、現場へ行って実物を見て触れることで、それまで見えなかったものが見えてくることもある。たとえ最新の技術ではなかったとしても、他社がどのような技術を使っているのか、自社製品と比較してどんな違いがあるのか、その中から今まで気付かなかったものが見えてくることもある。
印象的だったのは、日本の某大手機器メーカー関係者が、とある展示車両の冷房の効き具合をチェックし「車内を回ってみたけど、場所によって効きの悪い場所があった」と会話していたことだ。なるほど、言われてみれば確かに効きにむらがある。連日の好天で蒸し暑く、ただ涼んでいただけの筆者は、無意識によく効いている場所へ移動していたのだ。このような視点があるのだと気付かされた場面だった。
新技術や新型車両の展示が全てではなく、他社製品に実際に触れて体感し、自社製品と良いところも悪いところも直接比較できる絶好の機会がイノトランスである。遠路はるばる現地へ出張した日本のメーカー関係者や技術者など、鉄道業界を担う人々がこの会場で発見した収穫が貴重な財産となり、新たなものを生み出す原動力となることを願わずにはいられない。
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