「内科や外科での実習を体験してみると、仕事自体は合っているけど、精神科以外はキツいなと思いました。もちろん、精神科もしんどい業務はありますが、体がメインの科は点滴をつけたり患者さんの体を拭いたりといった、身体のケアが優先で、患者さんとのコミュニケーションはプラスアルファという感じなんです。
でも、精神科は基本、患者さんとのお話がメインなので、私はそっちのほうが合っていると感じ、就活では精神科を志望しました」
夜勤をしても手取りは22万円ほど
大学卒業後に勤務したのは地元の精神科。夜勤もあり、手取りは23万~24万円で、一般的な新卒の会社員より少し多い程度だ。しかし、つねに人の命と死が隣り合わせにある医療の現場を考えると、決して多いとは思えない。それまではバイトで月8万ほどしか稼いでいなかったので「こんなにもらえるんだ!」という感覚のほうが大きかったとアカネさんは言う。
仕事では主に依存症の患者と向き合った。現在は法律で禁止されているが、当時は規制されていない「合法ハーブ」が大流行中で、ハーブ依存症患者が病院に多く駆け込んできた。
幻覚や幻聴に襲われ、薬が抜けると落ち着くが、極めて依存度が高く、快楽が忘れられず手を出してしまう……といった、違法薬物の恐ろしさをアカネさんはひとしきり語ってくれた。
「依存症に陥ってしまう人って、幼い頃の家庭環境などのトラウマが現在のつまずきにつながり、アルコールや薬物に手を出してしまう可能性が高いと心理学的には考えられます。私も、家庭が厳しかったことから、精神科への興味が湧いた部分があります」
このような依存症に陥らないためには早期発見・早期治療が必要だと感じ始めたアカネさん。
ならば、子どもを専門にした病院に移りたい。そう思うようになり、3年勤務した後、現在働いている関東の子ども向けの精神科(児童思春期精神科)へ病院を変えた。今は不登校に悩んだり家庭内暴力を起こしたりしてしまう中高生と接している。
「病院を変えたら、月給の手取り額が22万円にまで下がってしまいましたが、5年目の今は23万~24万円です。夜勤も月5回あり、通しで16時間働きます。最近は、夜勤が体力的にキツくなってきました。今は病院の寮に住んでいて、寮費は月1万円。光熱費は7000円くらいです。寮には8年間しかいられないルールがあるので、この先は毎月7万円くらい家賃にかけないといけないことを考えると不安です。正直、今もお金はカツカツです」
そんなアカネさんが最もお金をかけている趣味が和服。着物と帯と小物で、合計100万円のローンを組んだこともある。休日は飲みに行ったりライブに行ったりするが、大きな無駄遣いはしていない。貯金はほとんどできておらず、現在の貯金額は20万円ほどだ。
看護師はハードワークと引き換えに高収入というイメージを抱く人も多いと思うが、実際は病院によってまったく違い、アカネさんの勤める病院は特に低賃金だそうだ。
結婚をすると経済的な面で楽になる部分があるため、恋愛について聞くと、ここ数年、恋愛を疎かにしていたことに気づき、合コンにも積極的に参加していたが実りはゼロ。そんなとき、虫垂炎で倒れたアカネさんの手術を担当した医師と交際に至ったが、お互い忙しく、デートも数回しかできないまま別れてしまったという。
「看護師=高収入」というステレオタイプが崩されたインタビューだった。余談だが「精神科ではパニックを起こして暴れる患者さんもいると思いますが、そのような患者さんと接するのは怖くないですか?」と聞いたところ「でも、いちばん苦しい思いをしているのは、暴れている本人なのだと先輩看護師に教わりました」とキッパリ答えたアカネさん。彼女の真摯さに、ただただ舌を巻いた。
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