「文科省お墨付き」に執着する大学の"勘違い" 東京医大は、いったいどこで道を誤ったのか

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東京医科大学が、私立大学研究ブランディング支援事業に選定されたからといって、医学部受験業界では、難易度が高い慶應義塾大学医学部、日本医科大学、順天堂大学医学部、東京慈恵会医科大学より優れているとは、評価されていない。これが現実であり、受験生目線では大学支援事業によるブランド力は、幻想といえるだろう。

それでも、東京医科大学は、私立大学研究ブランディング支援事業という看板がほしかった。3500万円という助成額は、医学部の研究を考えれば安価といっていい。実より名を取りたかったのは、文科省お墨付きへのこだわりだろう。

大学支援事業は国庫、つまり、税金から投入されたものだが、大学にとってその意識が薄いように思える。私立大学研究ブランディング支援事業にしても、SGUにしても、その具体的な中身を国民に知らせようという発想は、出てこないからだ。東京医科大学も例外ではない。それゆえ受験生にブランディングが伝わるわけがない。

それでも、大学が文科省の大学支援事業を受けたがるのは、お金ほしさ、そして箔つけだけではなかった。選定されたという実績づくりが大切なのである。

文科省OBを重宝して受け入れる大学

まず大学は文科省をリタイアした役人を事務方に受け入れて重宝する向きがある。元文科省の役人は、「国の大学政策を読み解ける」「支援事業の申請手続きに詳しい」「学部学科の設置認可に精通する」「大学運営を指南してくれる」……そう信じている大学経営陣は少なくない。昨年の1月に発覚した文科省の天下り先斡旋事件では、再就職先が文科省と利害で関わる大学なので問題となった。大学側が、文科省OBを求めていることは容易に想像がつく。

そして文科省から大学支援事業の話が出れば、大学はすぐに飛びつき、うまくいけば選定される。その積み重ねによって、「わが大学は文科省から覚えめでたき存在として高い評価を受けた、これで文科省との信頼関係が築ける。設置認可申請では有利に動くだろう」と、思い込んでいる大学もある。おめでたい話だ。しかし、当然、有利に動くはずはない。

大学支援事業に振り回されている大学は、実際のところ、かなり疲弊している。得意でない分野の支援事業のために、教職員に無理をさせている。大学はもっとやるべきことがあるのに、国の言いなりになってしまっている。そこに大学の主体性が感じられない。大学は政府から独立した存在である。学問の自治は最大限に保証されるべきである、という大原則を忘れてしまったかのようだ。

国の大学支援事業に、無理矢理合わせた教育体制を急ごしらえしたことで、学内が混乱するケースも散見される。SGUを例にとると、それまでグローバル化に力を入れてこなかったのに、SGUで設定した目標達成のため、急に留学生や外国人教員を多く受け入れたり、海外留学制度枠を拡げたりしている。大学教育は一朝一夕で変わるものではない。SGU選定大学の中には、相当しんどい思いをしている大学がある。教職員からは悲鳴の声があがっている。

SGUに選定されなかった大学はどうなったか。「一橋大学、神戸大学、同志社大学はグローバル化に力を入れていないから、受験生にそっぽを向かれた」という話は聞いたことはない。依然、第一志望校として、人気は高い。

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