「文科省お墨付き」に執着する大学の"勘違い" 東京医大は、いったいどこで道を誤ったのか

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「“勝ち組”になったことを、学内のみで共有するのはもったいない。わが大学がいかに優れているかを世に訴えよう。受験生に広めれば、志願者が増えるはずだ。企業は優位性を評価して研究に賛助金を出してくるに違いない」。そう考えた多くの大学で、「大学支援事業に選ばれました」というアピールがなされた。大学が広報のネタとして使おうと考えるのも、自然の成り行きである。

しかし、それが、どれだけ効果があるのだろうか。 受験生からすれば、大学支援事業選定云々はまったくといっていいほど、大学選びの参考になっていない。「私立大学研究ブランディング事業」に東京医科大学が選ばれたから受験しました……・という受験生はいないだろう。

また、高校、予備校関係者の多くが、「私立大学研究ブランディング事業」の存在を知らなかったはずだ。知っていたとして、教え子に「私立大学研究ブランディング事業に選ばれたから、この大学はおすすめ」という話にはならなかっただろう。

なぜなら、「ブランディング」の中身がよくわからないからだ。「ブランディング」と名付けられながら、大学受験の世界では、何らブランド力を発揮していない。これが現状である。

悲しいことに、そもそも大学支援事業は受験業界では、それほどインパクトがない。思い出されるのが2014年に始まった、「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)事業である。留学生派遣、外国人教員、英語による授業など、大学のグローバル化をすすめる大学を評価し、支援事業はタイプAとBに分かれ、Aは上限で10年間毎年4億2000万円、Bは同1億7200万円支給するものだった。

受験生は「スーパーグローバル大学」に関心なし

SGUの選考結果は少し意外なものだった。当然選ばれるだろうと思っていた一橋大学、横浜国立大学、神戸大学、首都大学東京、青山学院大学、中央大学、南山大学、同志社大学、関西大学、西南学院大学といった大学が落選したからだ。「他大学よりもグローバル化を進めているのになぜ」と、これら落選大学の落ち込みようは激しかった。大学のプライドがズタズタにされたと、悲嘆にくれる学長もいた。

一方、SGUに選ばれた大学は、東京大学や京都大学など旧帝国大学を起源とする7大学を筆頭に、筑波大学、東京工業大学、東京医科歯科大学、東京外国語大学、岡山大学、熊本大学、早稲田大学、慶應義塾大学、国際基督教大学、上智大学、立教大学、明治大学、法政大学、芝浦工業大学、東洋大学、創価大学、立命館大学、関西学院大学などだった。

大学はSGUを思いっきり宣伝材料に使った。しかし、その効果は、受験生の増加につながったとは言い難い。SGU選定から4年経った今日、グローバル化という観点から、青山学院大学よりも東洋大学、中央大学よりも創価大学、東京理科大学より芝浦工業大学、同志社大学よりも立命館大学、神戸大学よりも岡山大学を選ぶだろうか(前者はSGUに落選、後者はSGUに選定)。

残念ながら、受験生はその大学がSGUかどうかなど、さほど関心を示さない。大学の歴史、伝統、難易度、ブランド力を優先している。同じような難易度で併願相手として組まれる、法政大学と中央大学、東洋大学と専修大学を比較するなら、SGUに選定された前者を選ぶかもしれないが、必ずしも「SGUだから」というわけではないだろう。教育内容、通学圏内を理由に選ばれたということのほうが、説得力はある。

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