「文科省お墨付き」に執着する大学の"勘違い" 東京医大は、いったいどこで道を誤ったのか

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また当時、学習院大学や駒澤大学、東京理科大学、龍谷大学、近畿大学といった大学がSGUに申請していなかったが、このうち、学習院大学が2016年に国際社会学部を設置。龍谷大学は2015年に国際文化学部を改組して国際学部を設置した。近畿大学も2016年に国際学部を作っている。いずれも2015年以降の設置で、「大学支援事業のSGU資金なんか頼らなくても大丈夫だよ」と、言わんばかりだ。

大学支援事業について、その大学の得意分野と、国の政策(教育、研究方針)が合致し、補助金が交付されるのであればありがたい。ただし、それはブランド力にならない。事業がブランド力として評価されて、志願者が増えた、難易度が高まったという話は聞いたことがない。

もし、大学支援事業でブランド力を高めたければ、大学自ら創意工夫するしかない。それをメディアに繰り返し訴えていく。「わが大学の学生はこんなにすごいんだぞ」と、具体的にアピールする必要がある。 

一方で、大学支援事業をうまく活用している大学もある。「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」を有効に活用した大学だ。その中身は、「大学が地方公共団体や企業等と協働して、学生にとって魅力ある就職先の創出をするとともに、その地域が求める人材を養成するために必要な教育カリキュラムの改革を断行する大学の取組を支援する」もの。

2015年度、同事業には青森中央学院大学、東北公益文科大学、共愛学園前橋国際大学、富山国際大学、金沢工業大学、新潟青陵大学、松本大学、広島国際大学、徳島文理大学、長崎国際大学、熊本学園大学など、地方の私立大学が数多く選ばれている。

地域定着の成功はあくまで大学自身の手柄

このうち共愛学園前橋国際大学は、「持続的地方創生共同体形成プログラム:若者定着県域総ぐるみ計画」で採択されている。一言で言えば、地元の高校生を受け入れ、地元の自治体や企業に就職させるという事業だ。大学は地域の高校や企業をまわって、「若者定着」のための教育内容を訴えた。これによって、同大学が学生を地域に定着させることに成功し、大学周辺の高校で評判となって、いっとき、定員割れしていた志願者数はV字回復を果たしている。

なお、共愛学園大学前橋国際大学は、大学支援事業選定を広報の売りにはしていない。国の支援はあくまでも手段であり、目的ではないからだ。地域定着成功によるV字回復は、大学の手柄であり、受験生目線にかなったわけである。

大学支援事業に対しては、大学がとるべきスタンスは、(1)支援内容に無理矢理合わせない=急にグローバル化などの対応は無理。(2)選定時には浮かれて自慢しない=受験生はピンとこないし、大学にとってもたいして箔はつかない。(3)支援で結果が示されたら具体的に伝える=志願者増、学生や教職員の活躍を訴える――といったところだろうか。

大学支援事業の活用について、勘違いしている大学は少なくない。東京医科大学は「女性研究者研究活動支援事業」にも選定されているが、入試で女子受験生抑制という実態が白日の下にさらされたいま、このテーマで「選ばれました」などと、とても恥ずかしくて自慢できないだろう。

その大学に関心を持ったならば、「大学支援事業によって大学はどれだけすごいことになりましたか」と、聞いてみることをすすめたい。大学支援事業選定を自慢するものの、その成果をまったく答えられない大学は、「たいしたことない」と判断し、税金を無駄に使ったのだと、冷めた目で見ていい。

小林 哲夫 教育ジャーナリスト

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こばやし てつお / Tetsuo Kobayashi

1960年生まれ。教育、社会運動問題を執筆。1994年から「大学ランキング」の編集者。著書に『神童は大人になってどうなったのか』『早慶MARCH』『ニッポンの大学』など。

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