コメから酒を造る「京急電鉄」常識破りの挑戦 10年前から秋田と交流、ついに独自銘柄発売

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京急グループと秋田のつながりは意外に長い。同社とJA全農あきた、秋田県が共同で展開するキャンペーン「京急あきたフェア」は今年で10周年を迎える。フェアは毎年、新米が出回る10~11月に同社沿線のグループ店舗で秋田県産品の販売促進を目的に開催している。オリジナル日本酒の販売も、京急創立120周年とフェア10周年の2つの節目を記念して実施する。

手作業で稲刈りをする体験もした=2017年9月(記者撮影)

もともとは、秋田県とJA全農あきたが2009年、アンテナショップ「あきた美彩館」を、京急グループが運営する品川駅近くの商業施設「ウィング高輪WEST」に出店したことがきっかけだ。同年には北秋田市の田んぼで京急グループ社員が田植えと稲刈りに参加する交流を始め、毎年継続している。2年目には秋田内陸縦貫鉄道の駅を訪れ、清掃や「白線引き」の作業をした。東日本大震災が起きた2011年は、京急線で「東北支援復興号」を運行。車内の中吊りなどで秋田だけでなく東北6県の観光や食といった魅力を紹介した。

一方で農業系学科がある秋田県立秋田北鷹(ほくよう)高校の生徒が首都圏の店頭で農産物を販売する「就業体験」も、毎年ではないが実施してきた。2014年には生徒が考案した県産食材を使った「空弁」を羽田空港などで販売した。

京急電鉄の菅(すげ)貴史広報・CSR課長は相互の交流について「将来生産者になる高校生は『コメが出荷されてどのように販売されているか』を学び、グループ社員には『自分たちが売っているコメがどうやって作られているか』を体験してもらうのが狙いだ」と話す。

交流がコメ販売のヒントに

同社グループが沿線の店頭で取り扱うのは、農薬の使用を減らして栽培した「秋田県産あきたこまち あきたecoらいす」。パッケージには京急電鉄のマスコットキャラクター「けいきゅん」が描かれている。

2013年には新たにコンパクトな2kgの袋に詰めて沿線の駅構内のセブン-イレブンでの販売を始めた。2kgサイズを採用したのは「これまで5kgの袋しかなかったが、持ち帰りしやすいサイズが欲しいというお客さまの要望があった」(同社)ためだ。現在は5kgよりも2kgのほうがよく売れるそうだ。

これは相互の交流がもたらした成果のひとつと言える。車で買い物に出掛けることが多い秋田では2kgサイズが売れるという感覚がなかったといい、首都圏の売り場で聞いた消費者の声を生産地へ直接反映させることができた。さらに今年は試食販売会などで出された要望に応え、無洗米を商品化することにした。

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