コメから酒を造る「京急電鉄」常識破りの挑戦 10年前から秋田と交流、ついに独自銘柄発売
10年目のフェア開催を前にした9月27日、秋田県庁で開いた記者発表会で、県の大友義一うまいもの販売課長は「神奈川県内は販路の面でなじみの薄いエリアだったが、フェアを契機に知名度がものすごく高まったと感じている」とこれまでの歩みを振り返った。そのうえで、今後の10年について「これまで以上に県産品の販路開拓や秋田ファンの拡大に力を入れていきたい」と力を込めた。

米どころ秋田にとって年々進む「コメ離れ」の問題は深刻だ。農林水産省の「食料需給表」によると、2017年度の1人あたりの年間消費量は54.2kgでピークの1962年度(118kg)の半分以下の水準にとどまっている。
首都圏の消費者を対象に京急も一緒になって、秋田の田んぼで親子参加の「田植えツアー」を実施したり、「お米の美味しい炊き方講座」を開催したりと、さまざまな「食育」イベントを通じてコメの需要回復につなげようと試みている。あきた美彩館はご当地料理と日本酒を楽しむ「女子会」を開催して若い女性にコメの魅力を再発見してもらおうと懸命だ。
品川の大看板「秋田の人も見て」

品川駅には「美人を育てる秋田米」の文字が目を引く、大型の広告看板が掲げられている。羽田空港へのアクセスの利便性をアピールする京急の「羽田へビュン。」の看板と隣り合わせだ。首都圏で県産米の知名度を上げて販路を拡大したい秋田と、羽田空港にアクセスする乗客を少しでも増やしたい京急の共同歩調を象徴するかのようだ。
JA全農あきたは「京急あきたフェアを展開する中でインパクトのある看板を、と出させてもらった。日本有数の乗降客数を誇る品川駅でアピールするとともに、飛行機で上京してきた秋田の方にも見てもらいたい」と意図を説明する。「夜ライトアップされた看板を眺めたいがために、上京した際にはわざわざ品川駅前のホテルに宿泊する組合長もいるほどだ」(佐藤英一米穀部部長)という。
日本酒造りに携わる職人の間では「和醸良酒」の精神が受け継がれている。これは、京急と秋田が歩んだこの10年にも当てはまる。遠く離れたコメの消費地と生産地が地道に交流を続け、育んできた絆が日本酒「京秋の恵」の味に広がりを持たせているのかもしれない。
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