トヨタ「アクア」が抱える意外と悩ましい事情 異例のロングセラーで乗り換え勧めにくい

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トヨタは9月11日、従来3列シート仕様のみだった「シエンタ」に2列シートの5人乗り仕様を新たに設定して発売した。森口将之氏執筆による「トヨタ『シエンタ』5人乗りが追加された事情」(2018年9月20日配信)で解説しているように、福祉車両やタクシーの需要をにらんだうえでの施策なのだろう。

ただ、アクアのフルモデルチェンジにまだ時間がかかる現在の状況において、シエンタの2列シート仕様は、トヨタの販売現場がアクアユーザーに乗り換えを提案しやすい車種の1つになりうると筆者は思う。トヨタのコンパクトカーでは、背の高いハイトワゴンの「ルーミー/タンク」の人気が高いが、両モデルにはハイブリッド車が設定されていないのが、現アクアユーザーのネックの1つだったかもしれないからだ。

「販売のトヨタ」と自動車業界内で言われてきたほど、日本国内では圧倒的な販売力のトヨタは、販売店が自社顧客にトヨタ車からトヨタ車への乗り換えを勧める営業がうまい。トヨタが販売シェアナンバーワンを維持できているゆえんである。

「販売のトヨタ」でも肝心のタマがなければ…

もちろん、新型アクアが出たからといって、日産「ノート」のeパワーのように、目新しいメカニズムでも採用されないかぎりは、現アクアユーザーが同じ車名のクルマに大きな関心を示すかというと、そんなことはないかもしれない。それでも、肝心の「タマ」すらない状況ではそもそも乗り換えは勧められない。

もともとアクアは同クラス車の中ではラゲッジルームや後席が狭い点が指摘されてきたが、デビュー当時からしばらくは、「プリウスより買い求めやすいハイブリッド車」として売れに売れまくった。現行の4代目プリウスが苦戦しているのは、デザイン面の不評に加えて、使い勝手も要因とされている。今はハイブリッド車だからといって、爆発的に売れる時代でもなくなっている。次期アクアは実用性を高められるかどうかが大きなポイントになるだろう。

2009年から2015年まで販売していた3代目プリウスさえ、モデルサイクルは約6年。大ヒットモデルながら、それを超える異例のロングセラーで、今なおトヨタの最量販車種になっているアクア。売れているのはいいが、悩ましさを感じているトヨタ関係者も少なくはないはずだ。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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