「高級有料老人ホーム」でも虐待は起こり得る 介護の質は「施設長の経験」に左右される

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結局、建物が高価であろうが安価であろうが、コスト回収期間は変わらないため、従業員に割ける賃金の総額は同じような水準となり、人件費も同じにならざるをえないのです。介護職の賃金に大差がないため、ケアの質的にも同じようなものになります。高級有料老人ホームで高いお金を出しているからといって、安心・安全で良質な介護サービスが受けられるとは限らないという理由はそこにあります。

ニーズと人材のねじれ

介護職の質は、それぞれの介護職が身につけている対人的な専門技術である「対人援助技術」によるところが大きく、この技術をきちんと身につけている人ほど、質のよい介護を提供できます。しかし実は、そうした人材が有料老人ホームに就職するとは限りません。むしろ、しないほうが多いのです。

高齢者介護の領域にはさまざまなサービスの種類があり、そのサービスごとに「そこで働きたい理由」があるので、分かりやすいように大胆に割り切って、サービスの種類ごとに主に働いている人の特徴を以下にまとめてみます。

① 特別養護老人ホーム(要介護度3以上の中重度者の介護。個室型と多床室型がある)
年齢:20代〜40代前半
男女比:男性3:女性7
特徴:夜勤ができる/レクリエーションは苦手/コミュニケーション能力は比較的低め/パート・アルバイト比率は低い/専門性を求めている人は多い/求められるのは入居者への対人援助技術
② 訪問介護(軽度から重度まで幅広く対応。利用者の自宅での One to One 介護)
年齢:50代〜70代
男女比:男性1:女性9
特徴:一対一の介護が得意/レクリエーションは苦手/コミュニケーション能力高め/パート・アルバイト比率高い/専門性を求めている人は少なめ/家族と本人への対人援助技術が求められる
③ デイサービス(主に要介護1〜3の介護。通い。9時〜17時)
年齢:20代〜60代
男女比:男性4:女性6
特徴:夜勤がない/レクリエーション得意/パート・アルバイト比率高い/車の運転ができる/専門性を求めている人は半分程度/家族と本人への対人援助技術が求められる
④ 有料老人ホーム(自立〜要介護5まで対応。個室)
年齢:20代〜40代
男女比:男性3:女性7
特徴:夜勤がある/ホームの特性によって求められる能力が異なる/専門性を求めている人は半分程度/自立型〜要介護度1・2を対象にしているホームが多い/家族と本人への対人援助技術が求められる

あえて思い切った特徴づけをしましたが、上記のように、それぞれのサービス種類ごとに求められる能力や条件が異なるのが実情です。しかし、必ずしも、それらに合致した人材が働いているとは限らず、ミスマッチが多発しています。その結果として、ほかの産業と比較して離職率が高く、介護人材が介護業界から離れていってしまっている現状があります。

また、介護施設を開設する場合、多くは建設会社や不動産会社から「いい土地が出てきたのでやりませんか?」という提案がきます。つまりは、土地ありきの発想で施設を造る傾向にあることも否めません。

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