エアコンが赤字転落、津賀パナソニックの不安 上期決算は最高益も新たな課題が浮上
半導体も大リストラ
雇用への影響は、パナソニック本体の社員にも波及しそうだ。経営陣は表向き、不採算事業の人員について、車載や住宅など成長分野へのシフトで吸収すると説明するが、「設計や開発の人員は配置転換しやすい一方、工場のラインで働く人員は、どうしても余剰感が出る」(同社関係者)。
下期に大リストラに動くとみられるのが、半導体事業である。同事業はパソコンや携帯電話向けの需要が縮小し、不振に陥った。すでにシステムLSIは本体から切り離し、富士通と事業統合することで合意しており、具体的な交渉を進めている。
半導体は車載や産業向けなど成長市場に販売先を転換し、挽回を図る。ただ現状の人員をそのまま活かせるわけではない。経営陣はさらなるリストラの方針を固めているようだ。津賀社長は会見で「あらゆる可能性を探っている」と明言しなかったが、海外の生産拠点を中心に、約1万4000人の人員を14年度までに半減させる方針。国内ではすでに鹿児島の工場の一部設備売却などを進めている。
(注)週刊東洋経済記事、および当オンライン初出時に「一部設備」が抜けておりました。追加して訂正いたします(11月20日訂正)
その他の電子部品でも、リストラの本格化はこれからだ。赤字の回路基板事業は、すでに門真市(大阪)の工場での生産を終えた。今後は三重と群馬の工場も生産を停止し、国内は山梨工場のみとする。当然、これらの工場の雇用にも影響は及ぶだろう。経営陣は今後、こうした改革に伴う痛みと本格的に向き合うことになる。
改革道半ばのパナソニックだが、ここに来て、さらなる懸案も浮上している。エアコンとデジタルカメラが赤字に転落したのだ。
デジカメの採算悪化の背景には、スマホの普及に伴うコンパクトデジカメ市場の縮小がある。キヤノンやソニーも販売台数を下方修正しており、パナソニックも苦しい状況に陥っている。
さらに深刻なのが、白モノの王様ともいわれるエアコンの変調である。国内は酷暑の影響や省エネ製品への関心の高まりで、需要は旺盛。海外市場も堅調だ。ライバルであるダイキン工業は今期、過去最高益を見込む。追い風が吹く中での赤字転落は尋常ではない。
「エアコンは、アプライアンス社(同社の白モノ家電部門を統括する社内カンパニー)の利益の約6割を稼いできた主力製品。赤字転落は、ほかの製品にはない深刻なものだ」(同社関係者)
エアコンは単価が高い分、普及価格帯で売れ筋が出ればいいが、モデルチェンジに失敗すると、一気に赤字に陥るリスクがある。今期はそのモデルチェンジに失敗し、中国や国内で苦戦を強いられた。
来季に向けては商品の見直しなどで挽回する構えだが、エアコンの不振が続くと、AV家電に比べて堅実に稼ぐことができていた白モノ家電の収益性にも疑問符がつく。
「赤字事業をなくすことに強い意志を持って進める」。そう強調する津賀社長は、次々に現れる「ヤマ場」を越えられるのか。真価が問われるのはこれからだ。
(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2013年11月16日号)
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