京急「下町」色を刷新、マンション開発の勝算 かつての工場跡地が一変、通勤の流れが逆に

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大師線の港町駅はレコード会社、日本コロムビアの最寄り駅だった(記者撮影)

港町駅の2017年度の1日平均乗降人員は8147人で、マンション販売の前の2011年度に比べて約2.4倍に増えた。「以前は京急川崎から小島新田方面へ通勤するのが利用者の流れだったが、いまは逆になっている」(同社)という。乗客の流れの変化を受け、京急川崎駅では大師線の降り口を本線に近い3番線に変更するなど動線の改善を図った。

大師線を走る京急の電車。沿線にできたマンションの住民の利用が増えている(記者撮影)

このように大師線をはじめ京急沿線には、まとまった広さのある事業所跡地を活用して建てられたマンションが多い。同社グループが販売にかかわった物件を例にとっても、東門前駅の「フォレシアム」(777戸)は小松製作所の工場、京急鶴見駅の「オーベルグランディオ横浜鶴見」(553戸)は千代田化工建設の本社と事務所、といった具合だ。

京浜工業地帯の動脈のひとつだった同社沿線ならではの光景で、かつて通勤の目的地だった駅が、出発地の役割に変わってきている。

「都心の南下」待ち構え攻勢

京急が都心の玄関口とする品川駅周辺は、羽田空港や東海道新幹線への好アクセスを武器にビジネスの拠点とするには打って付けのエリアだ。JR東日本だけでみても品川駅の2017年度の乗車人員は37万8566人と渋谷駅を上回る。2020年にはJRの新駅、2027年にはリニア中央新幹線の開業が予定されており、オフィスを構える企業が増えると予想されている。

JR東日本が9月25日に発表した「品川開発プロジェクト」(第1期)の概要によると、品川新駅(仮称)を中心とする約7万2000㎡の広大な土地にオフィスや住居、ホテルなどが入る4つの高層ビルを建設。外国人就業者のニーズに対応した居住施設や文化施設などを整えることにより「国際ビジネス交流拠点」として一体的に整備する計画だ。

品川エリアに約6万㎡の土地を所有する京急グループも「都心が南下してくる」とこの好機を待ち構える。品川駅の地平化(2面4線)や踏切の解消、現在ホテルがある西口地区の整備など、同駅を核に大規模な再開発を推進していく考えだ。

こうした将来を見据え、現在、同エリアを取り巻く地域で手掛けている大規模マンションが「プライムパークス品川シーサイド」だ。「ザ・タワー」(817戸)と「ザ・レジデンス」(335戸)の2棟で構成する。同社は住宅事業ブランド「PRIME」のフラッグシップ(旗艦)と位置づけている。

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