京急「下町」色を刷新、マンション開発の勝算 かつての工場跡地が一変、通勤の流れが逆に

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京急電鉄が品川シーサイドで手掛ける大規模マンション(記者撮影)

ザ・タワーの場合、りんかい線品川シーサイドから徒歩3分の立地で、渋谷や新宿へのアクセスの良さがセールスポイントだ。他方、特急やエアポート急行が停車する京急の青物横丁駅へは徒歩9分で、直通する都営浅草線沿線や、羽田空港へも電車1本で行ける。旧東海道品川宿の風情が残る落ち着いた住環境もファミリー層に好まれやすく、売れ行きは好調という。

かつて京急電鉄の不動産事業と言えば、横浜市南部や横須賀市での宅地開発がメインだった。不動産分野での業務経験がある同社社員は「ウチもリヴァリエのような大規模な物件を扱えるようになるとは。大規模なマンション開発は当初は素人軍団でやっていたが、いまは経験を積んだ精鋭部隊が手掛けている」とこの数年での進歩を感慨深く振り返る。

「地に足の着いた方向けに」

同社は2020年度までの中期経営計画のなかで「沿線および都心部を中心に、賃貸事業・マンション分譲事業を展開し、交通事業に並ぶ柱へと成長させる」との目標を掲げている。分譲マンションは年間400戸程度の供給を目指す。

2019年3月期の業績予想によると、不動産事業の売上高は大規模マンションの販売などが寄与し、前期比41.6%増の666億円となる見通し。営業利益は66億円と、三浦半島エリアの分譲土地評価損を計上した前期(16億円の赤字)から大幅に改善すると見込んでいる。

京急沿線は、新橋や日本橋といったオフィス街に浅草線直通でアクセスできるうえ、新幹線や飛行機の利用にもアドバンテージがある。しかしながら、不動産事業ではエリアのブランド力が他社線に比べて弱いという面が否めない。

まち創造事業部の担当者も「京急川崎と武蔵小杉、上大岡と戸塚では、どちらも後者が派手なイメージで軍配が上がる」と認める。だが「派手さがない分、モノのいい物件が他社沿線より手が届きやすいため、背伸びせず、地に足のついた方々が購入してくれている。いたずらにブランド力にこだわるのでなく、顧客の生活目線に立った開発をしていきたい」と独自路線に自信をみせている。

品川の再開発による都心の南下をにらみ、京急沿線でのマンション開発の動きは北上しつつある。この流れに乗り、京急の鉄道と不動産事業も相乗効果を生み出しながら進む「2つの車輪」になるか、今後が正念場だ。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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