フェスも続々開催、「パンブーム」の新潮流 金額でコメを抜いたパン業界が向かう先
パン食文化の着実な広がりも、追い風となっている。総務省の家計調査によれば、2010年に世帯当たりの年間のパンの購入金額は2万3773円とコメの購入金額を抜いた。2017年までにコメの購入金額が2割近く落ち込んだのに対し、パンは同4%増えている。
パンイベントの集客力を、地域振興に活用しようとする動きも活発化している。横浜「パンのフェス」開催以前から、地域密着型のイベントが次々に開催されてきた。2011年の「世田谷パン祭り」(世田谷区)や2013年の「青山パン祭り」(渋谷区)の開催に始まり、神戸市や福岡市など全国で開催されるようになった。地元の商店会などが地域のパン屋を集めて主催している場合が多い。
売れ筋はシンプルなパンに
百貨店の催事場でも、パンのイベントが開催されることが増えた。2017年には三越伊勢丹が、伊勢丹新宿店で「ISEPAN!」(イセパン)を開催。松阪屋や阪神百貨店など、ほかの百貨店も開催するようになった。
相次ぐイベントでパン人気が再認識される傍ら、パン屋や、売れるパンのトレンドにも変化が現れている。
パン屋向け情報雑誌「ベーカリーパートナー」を発行するグローアップ社・メディア部課長の小林博樹氏は「最近の特徴は、砂糖やバターなどが比較的少ない食パンのようなシンプルなパンの専門店化。以前から多少はあったが、この2~3年で急に店舗が増えてきた」と話す。
こうした動きが広まる背景のひとつには、パン屋の人手不足がある。街のパン屋のほとんどは家族経営とされる。売り上げを確保しようと営業時間を長くするため、生地の仕込みの仕事を朝の2~3時から始めることも多く、重労働で人が集まりづらい。
そのため、パンの種類が少なく簡素であるほど一度に大量に作ることができ、新しくパン作りを始めた人でも製造工程を覚えやすいのだ。
作りが簡単でリピートにもつながりやすい食パンに特化するパン屋も多い一方で、40代以上には学教給食としておなじみだったコッペパンも人気が再燃、専門店が急増しているという。
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