韓国とアメリカが「衝突」する日が迫っている トランプ大統領の突飛な行動がリスク要因に
アメリカは韓国が北朝鮮と経済交流を拡大させることにも反対している。韓国にとっては、これも頭痛の種だ。
韓国の政府・与党は南北の経済交流拡大を強く望んでいる。たとえ、それが韓国側から巨額の税金を北朝鮮に注ぎ込む結果になったとしても、だ。なぜか。北朝鮮をなだめ、緊張を緩和するのに経済交流は不可欠と考えられているからだ。また、韓国は経済交流をテコに、北朝鮮国内で前向きな変化を作り出そうともしている。
対米方針は「できるだけ友好的に振る舞う」
しかし、北朝鮮に対する国連制裁は加盟国に北朝鮮と経済的に関わりを持つことをほぼ全面的に禁じている。つまり、国連制裁が緩和されない限り、文政権や与党が望んでいるような野心的な経済交流など不可能だ。国連制裁の緩和についてはアメリカが強く反対しているため、状況が変化する見通しは立っていない。このようにアメリカが経済協力の前に立ちはだかっている点も、米韓の緊張が高まる原因となっている。
韓国政権幹部の世代的な背景も影響を及ぼしている。文大統領は1970年代に民主化学生運動の活動家をしていた人物で、側近には1980年代後半に民主化学生運動を経験した「386世代」が多い。マルクス主義的な革命理論と韓国ナショナリズムが融合した不思議な思想が大学のキャンパスを覆っていた時代を生きてきた世代が今、韓国の政治を動かしているのだ。
時が経つにつれ、彼らの反米感情は和らぎ、北朝鮮の国家モデルに対する共感も完全に崩れ去った。だが、この世代特有の急進主義は今も生きている。文政権は一般的にいって、2008〜2017年の保守政権ほどには親米的ではない。もちろん386世代の思想傾向に対する右派からの批判はゆきすぎで実態ともかけ離れているが、同世代ならではのイデオロギー的傾向は確かに存在する。
今のところ、文大統領の対米方針は単純明快だ。一言で言えば、「できるだけ友好的に振る舞う」。そして、青瓦台(韓国大統領府)は楽観論を盛り上げるのに必死だ。
現実に何が起きたとしても、文政権の高官は「北朝鮮の非核化」は順調に前進していると大声で主張する。直面している問題はいずれも軽微で解決は可能、といったスタンスを貫き通しているのだ。政府寄りのシンクタンクやメディアは南北の経済協力を支持するリポートを作成したり、政府に有利な調査結果を広めたりするのに忙しい(政府寄りの調査は大抵、国連制裁が緩和されなければ経済協力は実現不可能、という厳しい現実を都合よく無視している)。
文政権が楽観論の演出に躍起となる理由ははっきりしている。アメリカが「最大限の圧力」へと後戻りしにくくなるように、外堀を埋めようとしているのだ。アメリカが強硬策に復帰すれば、韓国の平和と安定は重大な危機にさらされる。しかし、仮に韓国政府が大声で主張しているように「非核化は前進している」という認識を作り出すことができれば、アメリカが強硬策を打ち出さなければならない理由はなくなる。