韓国とアメリカが「衝突」する日が迫っている トランプ大統領の突飛な行動がリスク要因に

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韓国政府が派手に情報操作を繰り広げているのには、もう1つ狙いがある。対北制裁緩和に向けて国際世論を誘導し、南北経済協力に突破口を開こうとしているのだ。この戦略は不誠実かもしれないが、不合理ではない。

だが、限界はある。根拠があやふやだからだ。おそらく、アメリカの強硬路線復帰は時間の問題だろう。筆者は、来年のどこかの段階でアメリカは「最大限の圧力」を復活させることになるのではないかと睨んでいる。仮にそのような事態となれば、米韓関係には深刻な危機が訪れよう。

国益の違いが米韓を衝突させる

文政権と政府寄りの韓国メディアはこれまでのところ、トランプ大統領の北朝鮮政策が好意的に受け止められるよう必死の努力を続けている。韓国政府が触れ回っているストーリーでは、トランプ大統領は平和を愛する指導者として描かれることが多い。北朝鮮との和解実現に全力で取り組んでいる政治家、というイメージだ。

公正のために記しておくと、文大統領はトランプ大統領にうまく対処している。お世辞や巧みな誘導を駆使しながら、トランプ大統領がつくり出した脅威をコントロールする文大統領の手際は、世界の首脳陣の中でも際立っている。だが、それも当然と言えば当然だ。

なぜなら、文大統領が直面している問題は他国とは比較にならないほど深刻だからである。たとえばドイツのアンゲラ・メルケル首相は、トランプ大統領の突飛な行動によって首都ベルリンが集中爆撃され、壊滅するような事態は心配する必要がない。

韓国は今のところアメリカをおだてる作戦をとっているが、アメリカが今後、強硬路線に切り替えた場合にはスタンスを一変させてくる可能性が高い。文政権は強く抵抗してくるはずだ。必要とあれば、公然と反旗を翻し、アメリカの軍事オプションを押さえ込もうとあらゆる策を繰り出してくるに違いない。これも、当然といえよう。なぜなら強硬路線とは、同盟国である韓国に巨大な犠牲を強いながら、アメリカが自国の問題を一方的に解決しようとする試みに他ならないからだ。

もちろん、トランプ大統領は同盟国の国益を考慮するような人物ではない。韓国政府がいくら抵抗を試みたとしても、アメリカ政府のスタンスを変えることなどできないだろう。だが、このような事態となれば、米韓の同盟関係には大打撃となる。

つまり、アメリカと韓国が衝突するのではないかという政策当局者の心配は絵空事ではない。米韓首脳の思想的傾向や性格の違いにも原因はあるが、それ以前に双方の国益がそもそも大きく食い違っているからだ。

(文:アンドレイ・ランコフ)

筆者のアンドレイ・ランコフ氏は韓国・国民大学教授。旧ソ連のレニングラード国立大学を卒業後、同大学院で博士課程を修了。北朝鮮研究の世界的権威で、北朝鮮の金日成総合大学に留学した経験もある。北朝鮮ニュース取締役。
「北朝鮮ニュース」 編集部

NK news(北朝鮮ニュース)」は、北朝鮮に焦点を当てた独立した民間ニュースサービス。このサービスは2010年4月に設立され、ワシントンDC、ソウル、ロンドンにスタッフがいる。日本での翻訳・配信は東洋経済オンラインが独占的に行っている(2018年4月〜)。

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