MBA学長が「バスケチーム」を率いてみた結果 「赤字、成績も動員も最下位」を蘇らせた5原則
当時のロボッツは、前身のチームが2年前に経営破綻している赤字チームで、成績も観客動員数も最下位という三重苦にあえいでいた。水戸を活性化させるためにも、まずロボッツを再建しなければならない。
僕は起業家であり、ビジネススクールの学長だ。経営についてはそれなりの自負がある。プロスポーツチームの経営に携わるのは初めてだが、ロボッツの再建には自信があった。これまでのビジネス経験をもとに考え抜いてたどり着いた「5つの原則」に従えば、今回もうまくいくと確信していたからだ。
その原則に沿って話を進めていこう。原則の1つめは「可能性を信じ、志をたてる」だ。
ロボッツはアントラーズのようになれるのか。心のどこかで「そんなことは無理だ」という気持ちがあれば、実現は難しい。かと言って根拠もなく信じ込むのは、ただの無謀だ。そこには、自分自身が「これは実現できる」と信じるに足るロジックが必要だ。
そのロジックを見つけるために、栃木ブレックスや千葉ジェッツなど、他チームから話を聞き、海外チームの事例を研究した。そして成功しているチームの成長の軌跡を徹底的に検証した結果、ロボッツを数年でB1リーグ昇格&優勝を狙えるチームにすることは可能だと確信した。その日から僕は、自分に対しても人に対しても、自信をもって「ロボッツをB1で優勝させる」と言えるようになった。
1000人に声をかけ980人にふられてもOK
原則の2つめは「人を巻き込み、組織を作る」である。何かをやりたいと考えても、1人でできることには限りがあるし、なるべく多くの人を巻き込まないと大きなことはできない。
たとえば良い選手を獲得するために、僕は何人もの選手と会って食事をし、直接熱意を伝えた。選手にとって年俸はもちろん重要だが、お金だけでは彼らの心は動かない。練習環境やオーナーの本気度もチーム選択の重要な基準となる。
また、スポンサー集めにも奔走した。グロービスにはベンチャーキャピタルや企業研修部門があるが、僕はこの10年ほど、クライアントや投資家に営業で頭を下げる必要はなかった。その僕が何十社と行脚し、頭を下げまくった。おかげで茨城県内外から多くのスポンサーに協力していただけることとなった。
もっとも、声をかけた全員が協力してくれたわけではない。たくさんの人にふられた。でもOKだ。100人に声をかけ2人しか応じてくれなかったとしよう。これを「98人にふられた」と考えるか「2人応じてくれた」と考えるかは大きな違いだ。前者は絶望的な気持ちになるが、後者は「1000人に声をかければ20人応じてくれる」と考えることができる。
また、チームが強くなるためにはファンの後押しも不可欠だ。1人でも多くの方にファンとして仲間になってもらうため、僕は毎年水戸で2~3回、つくばで1回、スタッフと一緒に駅でチラシを配っている。こうした地道な活動は効くもので、オーナー就任時に1試合600人程度だった観客動員数は、今や1500人程度になり、今季は2200人を目指している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら