スマホの通信料金「4割引き下げ論」の舞台裏 官房長官・総務相の衝撃発言の真意とは?
続いて、野田総務相の発言によって表面化した、接続条件における「速度差別」問題に関して検証してみたい。総務省はどのような取り組みを進めているのだろうか。
ここで”速度差別”と言われているのは、ソフトバンクのサブブランドである「Y!Mobile」や、KDDI子会社の「UQ Mobile」などの仮想携帯電話事業者(MVNO)と、IIJや日本通信といった独立系のMVNOのネットワーク速度差が顕著であるため、系列ブランド向けの接続料とMVNOへの接続料に”差別がある”のではないか、という疑惑だ。
9月中をめどに電気通信事業法施行規則の改正案をまとめる、とされているのは、MNOに対して通信トラフィックの不当で差別的な取り扱いを行わない旨を、接続約款に規定することを求めているものだ。
小林政務官によると「MNOのサブブランドが独立系MVNOに比べ優遇されているとの不満が、検討会の中で独立系MVNOから挙がった。そのためソフトバンク、KDDIからネットワークや契約料金など具体的なデータを提出してもらったところ、サブブランドが購入している帯域はMVNOより広いのは事実だが、その分、支払っている回線料も高く、不当なものではなかった」という。
とはいえ、ソフトバンクは同一の企業が2つのブランドを運営しており、UQ MobileもKDDIの子会社。またKDDIはUQ MobileからTD-LTE回線を借りる立場でもあり、本当に公正な取引となっているかは疑いの余地が残る。
「グループ内MVNOにネットワークを提供する際、事実上の金銭的補助、いわゆる『ミルク補給』が何らかの形でなさていないか、という点については引き続き検証する。今後、競争環境の同等性についてフォローアップしていく」(小林政務官)
具体的にどのようなフォローアップが必要だろうか。モバイル市場検討会での議論や、携帯電話の価格設定に関連した公正取引委員会での議論を掘り起こしてみると、そこには競争環境を整えるうえで重要となる「ネットワーク提供条件の同等性確保」に関して、また”別の視点”があることが浮かび上がってくる。
フォローアップでの議論が期待されるテーマ
以下は筆者がMVNO事業者などへの取材を通じ、テーマとして浮かび上がってきたものだ。
ひとつ目は定額音声サービスだ。現在、Y!MobileとUQ Mobileには定額音声サービスが卸されているが、他のMVNOには卸されていないという。料金が高くなりやすいためデータ通信の価格が問題になりやすいが、データ回線の速度以前に、そもそも提供される音声サービスのメニューが公平ではないという言い分だ。
さらに、回線を貸し出しているMNO自身と、回線を借りているMVNOの競争環境が公平かどうかについも検討の余地がある。
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