スマホの通信料金「4割引き下げ論」の舞台裏 官房長官・総務相の衝撃発言の真意とは?
前述したとおり、MNOのサブブランドと一般的なMVNO向け回線の接続料に差はなかった。データ通信回線の接続料算定基準には一定の業界ルールが決まっているが、算定の元になるデータは”実績値”だ。
日本で最初にMVNO事業を始めた日本通信・代表取締役社長の福田尚久氏は、MVNOが入手できる実績値について「2年前のデータしか入手できないため、その時点での原価に基づいて接続料を計算せざるを得ない」と指摘する。過去10年を振り返ると通信容量当たり原価は平均して年に約23%ずつ下がっている。にもかかわらず、2年も前の実績値データで接続料を算定せざるをえないようでは公平な競争環境は保てない」というのが福田氏の主張だ。
さらに、各社が提供している原価のデータも議論の対象となる可能性がある。なぜなら、NTTドコモの回線原価に対して、ソフトバンクは1.5倍、KDDIは1.2倍の原価が設定されている。しかし、3社の利用料金はほぼ横並びだ。では原価が1.5倍のソフトバンクは利益の面で相当に厳しい結果となるはずだが、実際にはそうなっていない。
そこでMVNO向けの卸価格を決める原価について、「ヤードスティック方式」(複数の事業者のコストを比較して基準となる「標準コスト」を設定し、標準コストを元に卸価格を定める方式)で算定を検討すべきではないかという声もある。3社の原価計算根拠をそれぞれ調査したうえで標準原価を算定すれば、同等性を巡る疑義がなくなるというわけだ。
競争環境の公平性がカギ
MNOの料金プランは一般的に”1年先”の原価を予測する形で作られている。つまり「2年前の原価を元に計算せざるを得ないMVNOの原価とは3年分の開きがあり、その差は約1.86倍だ」(福田氏)。このような大きな差が実際にあるのならば、MVNOの速度が遅くせざるをえないことは自明だろう。
”格安”とは、読んで字のごとく”格”の高さに対して安価であることを示す。質の悪いサービスが安価で提供されるのは当たり前のことで、本当の意味での格安とは言えない。しかし、公平な競争環境を整えることができれば、品質の高いサービスを安価に提供し、本質的な勝負をすることもできるようになるだろう。
情報通信行政・郵政行政審議会が9月中に出すという電気通信事業法施行規則の改正案は”接続料の差別”を盛り込むのみだが、さらに踏み込で競争の公平性を担保するフォローアップ会合も予定されている。改革に向けて接続料についての議論が、さらに深まっていくことを期待したい。
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