容疑者ケインズ 小島寛之著
1960年当時、ケインズ経済学は輝いていた。ケネディ政権はサミュエルソンらを登用し、ロビンソンなどの左派も元気いっぱいだった。しかし今、ケインズ政策といえば放埓(ほうらつ)な財政出動と同義といわんばかりの理解が横行している。
著者はケインズの個々の定義や一般的政策論については批判的だが、ケインズの言わんとしたことを推量し、現代的意義を認めないわけではない。公共事業の効果は否定されるが、議論に赤字国債が加われば話は変わるだろう。
サブプライム危機をテーマにした章ではナイトの不確実性理論などタイムリーな解説がなされ、選好と意思決定のメカニズムについての章も興味は尽きない。総じて最新の経済学が易しく理解できる構成になっている。そしてきちんとケインズに戻ってくるところはなかなかに読ませる。それにしてもよくわからないタイトルだ。はやりの映画にあやかったのか。あまり深く考えないでおこう。(純)
プレジデント社 1260円
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