知之は続けた。
「家族のこと、お兄さんのこと、これまで大変な思いや悲しい出来事があったと思うのだけれど、彼女の口からは、後ろ向きな言葉を一度も聞いたことがないんです。一緒にいると元気がもらえる。僕は自営業だから、これからいいときもあれば、悪いときもあるかもしれない。でも、彼女がそばにいてくれたら、何があっても乗り越えられるような気がしたんです」
このヒアリングの内容を結子の仲人にも告げた。その後、結子の気持ちも結婚へと固まったようだった。
プロポーズは思い出が詰まった浜辺で
6月に入り、結子の両親に結婚の許しをもらうため、実家を訪れた。
「たくさんの料理とお酒が用意されていて、大歓迎してくれました。新居の話になったら、お義父さんが、“兄夫婦が家族で住んでいたマンションが、今荷物置き場になっている。荷物を整理して、そこを新居にしたらどうか”と提案してくださいました」
こうして、新居も決まった。
知之の親にはまだ結子を会わせていなかったが、この結婚には大賛成をしてくれていた。
これで結婚の形が整った。
翌週は、知人の宝石店に2人で結婚指輪を買いに行った。
「順番が逆になるけれど、結婚指輪を先にしたのは彼女の指のサイズを知るためでした。プロポーズは正式にしたかったし、そのときの婚約指輪は内緒で用意したかったんです」
7月に入り、今度は知之が実家に結子を連れて行った。この日、知之は、サプライズプロポーズを計画していた。
車で出掛けたのだが、実家に行く前に、サイズを直しに出していた結婚指輪を宝石店で受け取り、2人がそれをそれぞれの左手の薬指にはめて出向いた。
知之の実家は海がある街だった。
夕刻、海の近くに車を止め、2人で浜辺を散歩した。夕日が海をオレンジ色に染めていた。懐かしい潮のにおい。心地よく足を取られる砂浜。
「ここ、子どもの頃、よく遊んでいた浜辺なんだよ」
そして歩みを止め、結子に言った。
「結ちゃん、結婚指輪、もう一度よく見せて」
結子が指輪を外して知之に渡した。そのとき、ポケットに忍ばせておいたダイヤの婚約指輪を取り出し、結婚指輪と婚約指輪を重ねて、それを差し出した。
「結ちゃん、僕と結婚してください」
「えっ!?」
驚く結子の瞳が、涙で潤い始めた。
「はい、これからもよろしくお願いします」
重ねた指輪を知之が結子の左手の薬指にはめると、結子は涙をこぼしながら笑顔を作った。
婚活パーティから生まれたミラクル婚。
幸せの末広がりを願って2人は8月8日に入籍をした。この日、役所の前で提出する婚姻届を仲良く2人で持つ記念写真が私のところに送られてきた。
本当におめでとう。末広がりの幸せをね!
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