水害リスクの高い日本に足りていない備え アメリカやフランスは保険加入を義務化
さらに、実際、3000万円の保険料が支払われるのは、持ち家が「全壊」と認定された場合や、金額ベースで70%以上の被害が出た場合のみ。床上浸水でも45cm以上でないと補償されないなど条件が厳しい。
多くの人が水害リスクを軽んじているだけでなく、保険料が高額なうえに上記のような制約があることも、保険の普及を抑制しているように見える。
欧米では「水害保険」の義務化が進んでいる
一方、欧米の先進国では、水害保険の加入を義務付けているところが多い。
たとえば、ミシシッピ川などのハリケーンや洪水が多いアメリカでは、1968年に連邦洪水保険制度が設立され、水害保険は政府が運営している。洪水のリスクは破滅的で巨大な被害額になる恐れがあり、正確な保険料率の決定が難しい。民間の保険会社では採算が合わないことが、すでに1950年代から明らかにされ、1960年代に政府主導に移行した。
フロリダ州、テキサス州、ルイジアナ州など危険地域の加入が義務化されたことで加入率は増加、被災者は一軒家で最大約2500万円補償されることになった。加入者を増やすため、政府管轄の住宅ローンを借りる人に対しても、銀行が水害保険への加入を義務付けている。
一方、イギリスでは、民間の住宅保険に水害の補償が付帯されているが、危険地域での未加入者の増加を懸念し、2016年4月に洪水再保険基金(ファンド)が創設された。もし被災者への巨大な補償額を民間保険会社が支払えず、大規模な損害が出た場合には、政府から借り入れができる。政府と民間保険会社は、提携・協力関係にある。
フランスでは、1981年の大規模な洪水災害をきっかけに「巨大自然災害保険制度」が創設された。住宅保険に水害保険が強制的に付帯されたことなどで、国民のほぼ100%が加入している。民間保険会社も水害保険を販売するが、大洪水が発生し補償金が不足した場合には、政府が補償する。地震よりも水害被害のほうが拡大しやすい事実を国民に周知させており、車や財産などの補償も義務付けている。
最近は、日本でも賃貸人に対して大家側が貸す条件として火災保険に加入させる例が増えているが、任意である。たとえ火災保険に加入しても、わざわざ高額になる水害補償の付帯をつける人は少ない。また、住宅ローンを借りる場合も、銀行から水害補償付帯の火災保険の加入をすすめられるが、義務ではない。
水害補償付帯の火災保険料は来年にも値上げする予定だ。近年、増加する大規模災害の補償額の支出のため、民間保険会社の負担が増加しているのが理由である。
冒頭で記したように日本の水害リスクは世界でも特段に高い。日本政府も他国に習って、水害保険、あるいは水害補償付帯の火災保険加入の義務化を検討すべきではないか。
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