アメリカ憲法と刑法の両分野で、全米の権威として著名なアラン・ダーショウィッツ、ハーバード大学ロースクール名誉教授は「大統領が対応すべき相手は、ミュラー特別検察官からニューヨーク南地区・連邦検察局へ移った」と、カザミ連邦副検事の捜査開始段階から繰り返し述べていたが、その発言は8月25日にFOXニューステレビ、同26日にABCテレビなどで改めて報じられた。同名誉教授の発言を契機に、大部分のアメリカのメディアはニューヨーク連邦検察局の動きを追うようになってきた。
トランプ氏にとって苦々しいのは、ジェフ・セッションズ司法長官が「ロシア疑惑」に関して全面的に忌避した結果、ローゼンスタイン司法副長官が、「反トランプ」バイアスの強いミュラー特別検察官を選任したことだ。その悪夢が、今回、連邦検察局によって再現されている、と言っても過言ではない。
トランプ大統領が事態を放任する可能性もなくはないが、その場合、カザミ連邦副検事が執念をもって、弾劾へとひた走るリスクは高まることになる。司法長官の忌避でひどい仕打ちにあったトランプ氏は、今度はニューヨークのナンバーワンの連邦検事の忌避によってひどい目にあうことになる。おそらくトランプ大統領の怒りは爆発寸前である。
連邦検察局のトップ交代を決断か
ナンバーワンとナンバーツーの間は、千里の開きがある。いかなる組織においても、最重要な仕事は、正統なナンバーワンによってなされるべきだ。そのナンバーワンが忌避した場合には、新たな人物を大統領が選任すべきだろう。
セッションズ司法長官の解雇は、政治的に実現性は低い、とされている。もし司法長官を解雇すると、リチャード・ニクソン元大統領が辞任に追い込まれた、ウ―ターゲート事件と実態はまったく異なるのにもかかわらず、表面的に似てきてしまうからだ。
しかし、連邦検事のケースは、ウォーターゲート事件との類似性はない。忌避して仕事面で不存在となっている連邦検事が新しい人物に代わったとしても、それは自然な交代であって、決して解雇ではない。誰の不名誉にもならない。
見逃せないのは、カザミ連邦副検事に仕事を委託したローゼンスタイン司法副長官が、「トランプ大統領は捜査のターゲットではない」と以前から明言しているにもかかわらず、「カザミ連邦副検事が大統領を捜査ターゲットとしていることは明白」と、NBCテレビなどのメディアがいっせいに報じている点だ。
仮に、民主党が11月の中間選挙に敗れても、その選挙結果とは無関係に、この連邦副検事が大統領弾劾を狙い続けることは、まず確実であり、際限がない。「大統領狙い」の捜査範囲は途方もなく広がり、アメリカ国の大統領システムを支える国民社会基盤は、どこまでも侵食され続ける。トランプ大統領は、連邦検察局という「組織」と「国民社会」のそれぞれの健全性を維持するためにも、連邦検察局のトップ交代を決断するのではないだろうか。
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