そのニューヨーク南地区・連邦検察局のナンバーワンのジェフリー・バーマン連邦検事は、トランプ大統領と面識があるうえ、まだ新人の連邦検事だった。そのためコーエン弁護士の案件を忌避し、ナンバーツーのカザミ連邦副検事が担当責任者となった。
家宅捜索には、当然、裁判所による令状が前もって必要となる。大統領の個人弁護士の法律事務所が対象になるだけに、捜索・押収令状の発付を裁判官に対して請求する検察側の責任者には、それ相応の「格」が必要になる。
ところが、「連邦副検事」の地位では軽量すぎて、家宅捜索に必要な、裁判所の捜索・押収令状を請求する責任者の「格」として、発付する担当裁判官が難色を示すのは間違いない。
そのため、ローゼンスタイン司法副長官は、ニューヨーク南地区・連邦副検事への権威付けのため、裁判官への請求にあたって、検察側の責任者として、自ら署名した。そのことはニューヨーク・タイムズ紙はじめメディアにも報道された。ところが、せっかくそこまで報じておきながら、肝心のことを報じていない。
担当裁判官からみて、軽量すぎるという人物が、まるでミュラー特別検察官に成り代わるかのように、大統領弾劾を狙って、ひたひたと捜査を拡大している。その活動は健全な社会の中で、果たして許されることなのか。アメリカの大手メディアは、この「格」の問題も含めて、もっと幅広く分析・報道すべきなのではないのか。
レバノン系アメリカ人が狙う「トランプ弾劾」
トランプ大統領は、親イスラエルの政治的な立場にあることを自認している。一方、カザミ連邦副検事は、「レバノン系アメリカ人」である。両者の間には相容れない対立があるとみていいだろう。
今回、コーエン弁護士の家宅捜索をめぐって、カザミ連邦副検事と対決してきたのは、イエール大学ロースクール出身の抜群に優秀な女性弁護士であり、トランプ氏側には、安心感がある。しかし、この「レバノン系アメリカ人」のカザミ連邦副検事が、事実上のトップとして今後も活動を続けるとなると、トランプ氏側にとって決して安心ごとではない。
そんな安心できるような人物ではないという証拠は、2016年の一時期にトランプ陣営の選挙対策本部長だったポール・マナフォート氏の有罪評決がなされた8月21日という同じ日に、コーエン弁護士の有罪答弁をテレビ記者会見で発表するということを、カザミ副検事がやってのけたことだ。その強引かつ派手な広報戦略は、この人物でなければできないだろう。
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