北朝鮮経済の仕組みは「マクドナルド的」だ 知られざる社会主義的フランチャイズ
米シカゴにあるマクドナルド本部は、その気になればフランチャイズ加盟店を少しずつ買い占めていって、店舗を自社保有・運営に切り替えることもできるだろう。それくらいの資金を調達することはできるはずだ。しかし、マクドナルドはこのような戦略はとらない。フランチャイズ方式は、本部にとってメリットが大きいからである。
その1つがリスク分散だ。店舗の地代、材料・資材費、設備費、従業員の人件費、採用コストなど、たいていの現金支出は本部ではなく、加盟店が責任を持つことになる。
各地域の情報を吸い上げるフランチャイズ網
言い換えれば、フランチャイズビジネスで巨大なリスクを抱えることになるのは、本部ではなく、加盟店だ。しかし、加盟店のオーナーはたいていが気合いの入った事業家だから、成功するためなら多額の自己資金を投じることも厭わない。オーナーが自らリスクを抱え込んで必死に商売を行えば、成果も上がりやすくなる。
マクドナルドの重役がフランチャイズ方式を手放さないのには、ほかにも大きな理由がある。加盟店が資本を投下してくれるので、本部の資本効率がよくなるのだ。
やる気にあふれ、喜んでリスクをとってくれる加盟店オーナーをかき集めることさえできれば、本部は巨額の資金調達を行わなくてよくなる。要は、安上がりに事業拡張できる仕組みなのだ。
こうしたフランチャイズビジネスのメリットは、北朝鮮の飲食店や漁業組合、バス会社、衣料品工場にも、そっくりそのまま当てはまる。
マクドナルドは成功した巨大企業だ。しかし、そのような会社であっても、ビジネスに必要な情報を完璧に把握できているわけではない。各地域から情報やアイデアを吸い上げるのに重要な役割を果たしているのが、フランチャイズ網だ。一部のエコノミストが指摘するように、フランチャイズ方式を採用することで本部はビジネス機会を探す手間を省くことができる。
加盟店は事業リスクの大半を背負い込んでくれるだけでなく、利益をあげる方法も見つけ出してきてくれる便利な存在なのだ。