北朝鮮経済の仕組みは「マクドナルド的」だ 知られざる社会主義的フランチャイズ
北朝鮮の飲食店と政府の関係も、基本的にはマクドナルドの加盟店と本部の関係と同じである。このような関係を説明するのに格好の事例が、国際貿易を担っている商社だ。1980年代後半以降、北朝鮮の商社と政府の関係はいろいろな意味でマクドナルドに近づいてきた。
北朝鮮で商社を管轄しているのは、強大な権力を持った政府や軍、朝鮮労働党の関連機関だ。一方、各商社には、鉱山や森林、農園のほか、キノコなどの一次産品が大量に採取できるような場所で資源開発を行う権利が与えられている。
実業家の商才や海外市場のコネクションを活用
だが、商社は必ずしも資源を開発する技術や能力、資金を持っているわけではない。
事業を行うには従業員を雇い入れる必要があるほか、商品の販売先も見つけ出さなければならない。そこで北朝鮮の商社は、本社サイドでこうした面倒を抱え込む代わりにフランチャイズ方式を導入し、独立した支店に仕事を肩代わりさせている。支店は本部の看板で仕事をし、本部に上納金を納めてはいるが、一応は独立した事業体だ。
支店のトップは民間の実業家で、こうした実業家が必要な設備や従業員をそろえ、石炭や金の採掘、キノコの採集、漁業といった具体的な事業を取り仕切る形になっている。
支店は国の銀行口座を持たされ、従業員に食料や物資を配給したり、朝鮮労働党の集会を定期的に開いたりするなど、国営企業の慣例に従うことも求められる。
マクドナルドのフランチャイズ契約では、各店舗間で違いが出ないように店舗デザインや調理法などが事細かに規定され、加盟店はそれを遵守することになる。北朝鮮の商社の場合は、政府機関としての体面を保つよう求められ、政府の内規に対しても部分的に拘束を受ける。
マクドナルドはフランチャイズ方式を駆使することで、起業家精神あふれるオーナー集団を囲い込み、各エリアで収益を最大化しようとする。一方、北朝鮮の商社は民間の実業家を支店長として招き入れ、国営事業を代行させることで、民間の資金だけでなく、彼らが持っている商才や海外市場とのコネクションをも活用しようとする。