北朝鮮の制裁はこんな感じに緩和されている 中国からの観光客も急増中
北朝鮮に「最大限の圧力」を加えるという米国の政策は、表向きは今も完璧に実行されていることになっている。ただ、ドナルド・トランプ米大統領が金正恩朝鮮労働党委員長とシンガポールで握手することが決まった時点で、すでに北朝鮮に対する制裁はもはや維持不可能との見方がもっぱらだった。
米朝首脳会談から1カ月以上。米国、韓国、日本、欧州連合(EU)、国連のいずれもが北朝鮮に対する制裁を公式には緩和していない。
だが、今年に入ってから中国、韓国、米国のトップと計6回にわたって首脳会談を行うという金委員長の外交攻勢によって、北朝鮮制裁は少なくとも水面下では緩み始めているようだ。NK Pro(北朝鮮ニュース有料版)が北朝鮮国内および中国との国境地帯の動きを洗ったところ、北朝鮮への制裁が各方面で緩んでいる実態が浮かび上がった。
増加に転じた中国との国境貿易
トランプ大統領の「最大限の圧力」が最高潮に達した2017年後半から2018年にかけて中国の対北制裁も強化された。その結果、中国の丹東市と北朝鮮の新義州をつなぐ国境の橋、「中朝友誼橋(ゆうぎきょう)」を行き来する貨物量が激減したことをNK Proは今年2月に確認している。2015年時点では、中朝貿易の約6割がこの橋を通じて行われていたとされる。
2月に取材した人物によれば、橋を通過するトラックは以前、1日に100台を超していたが、この時点では30〜40台まで落ち込んでいた。しかし7月に入ってからは、複数の消息筋が「状況は元どおりになってきた」と証言するようになっている。
「中朝を結ぶ例の橋は、以前のように中国のバスやトラックで混むようになってきた」と、事情通の1人は語る。「久々の混み具合だ。昨年10月頃に中国が引き締めに動いてから、あの橋がこれだけ混雑しているのは見たことがない」
5月下旬にNK Proが報じたように、この橋では貨物列車が夜間に中国側から北朝鮮側に向けて走って行くという珍しい光景が目撃されている。証拠写真を見ると、蓋のない4つの貨車はブルーシートで覆われており、貨物の内容を確認することはできない。