北朝鮮の制裁はこんな感じに緩和されている 中国からの観光客も急増中

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だが2017年以降、最近になるまで、北朝鮮を訪れる中国人観光客の数は極端に落ち込んでいた。北朝鮮の好戦的な振る舞いに中国政府が不快に感じていたことが背景にはある。

中国国際航空は2017年の終盤にかけて、平壌行き定期便の運航を停止した。利用客の落ち込みが理由とされたが、政治的な判断だった様相が色濃い。また、2017 年11月に北朝鮮が日本列島上空を通過するミサイル実験を強行したことを受けて、中国政府は平壌旅行を部分的に禁止。中国人観光客32人が2018年4月にバスの事故で死亡してからは、平壌旅行に対して2度目の部分禁止措置が発動されていた。

足元では中国人観光客が急増している

また、朝鮮半島を巡る緊張が高まっていたことから、観光需要そのものも減退。複数の消息筋によれば、2017年に北朝鮮を訪れた中国人観光客の数は2〜5万人のレンジに低下したとされる。2012年の23.7万人と比べると、恐ろしく低い水準だ。

しかし、金委員長と習近平国家主席との3度目の首脳会談をきっかけに、中国人の北朝鮮観光は一気に正常化する。中国国際航空は停止していた平壌便を6月に完全復活。4月のバス事故による観光禁止措置も瞬く間に解除された。中国の大手旅行検索サイト「Qunar.com(チュナール・ドットコム)」も、最近は北朝鮮ツアーの販促に力を入れているようで、中国人観光客の増加を後押ししている。

NK Proが取材したところ、中国人観光客が6〜7月に急増したことを裏付ける証拠が次々と浮かび上がってきた。そのうちのいくつかを紹介すると……

■ある観光業界関係者によれば、新義州と平壌を訪れる中国人観光客の数は今年、前年比で倍増する見込み。

■観光客が急増し、ツアー会社は対応に大わらわとなっている。最近、非武装地帯(DMZ)に出かけた業界関係者が言うには、「観光バスの数が多すぎて、DMZ内の駐車場は満杯。DMZの外にバスを駐車して歩いて行くしかなかった。DMZの外には25〜30台くらいのバスが駐まっていた」。

■中国人観光客の増加にガイドの数が追いつかず、普段は英語で観光案内を行っているガイドまでもが中国人観光客の対応に回される事態となっている。複数の関係者が語ったところでは「中国人観光客が増加したせいでガイドは過労状態。疲労困憊しているのが見て取れる」。

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