「健康スコアリング」が問う、社員の心と身体 従業員が不健康だと会社の負担も大きくなる

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自社の従業員が加入している健保組合単位で、健康状態についてのデータが取れるのだから、会社の経営者にも直視してもらい、健康増進を図り、従業員の活力向上や組織の活性化を通じて、企業経営の向上にもつなげる意識を持ってもらおう、と考えたわけである。もちろん、経営者だけでは取り組みが進まないから、従業員全体で協力して進めていくことが期待される。

健康スコアリングレポートでは従業員の生活習慣や健康状況がチェックされる

今回の送付に至るまでには、いくつかの布石があった。健保組合を設立しているのは大企業が多い。大半の中小企業は健保組合ではなく、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している。実は健康スコアリングレポートに似た取り組みでは、協会けんぽのほうが先行していた。

ちなみに、読者諸氏が自分はどの保険に入っているかを知りたければ、自らの健康保険証の下部に印字されている保険者名称を見ればわかる。

協会けんぽには、全国各地にある数多くの中小企業の従業員とその家族が加入している。協会けんぽの運営状況を全体として見ただけでは、加入している従業員の健康状態は総じてわかるとはいえ、個社単位で見ることはできない。でも、オリジナルのデータは、どの会社に勤めている人のものかは区別できる。

今やデジタルデータとして活用されている

協会けんぽの場合、都道府県単位で支部が設けられているので、支部ごとに、協力を申し出た地元の企業に対し、「事業所健康度レポート(診断票)」や「わが社の健康」等という名のレポートを、個社ごとに発行している。加入している企業は、健保組合のように自社だけで組合を運営しているわけではないから、その企業の経営者は、協会けんぽの運営そのものに高い関心を持っているわけではない。

しかし、中小企業が会社単位で協会けんぽからレポートを発行してもらうことで、経営者が自社の従業員全体の健康状態を知ることができるようになった。これが、主に大企業が加入する健保組合向けに出す、健康スコアリングレポートの先駆けとなった。

政府においても、これまでに健康スコアリングレポートを後押しする動きがあった。「日本再興戦略」(2013年6月閣議決定)において、国民の“健康寿命の延伸”を重要な柱として掲げた。ちょうど健診・医療情報のデジタル化がほぼ完了しつつあったころだ。医療のデータはわれわれが医療機関を受診するたびに、その記録がレセプト(診療明細書)として残されている。レセプトデータは、かつてすべて紙媒体だったから、データを悉皆的に分析することは困難だった。が、今ではデジタルデータとして匿名化・暗号化されたうえで、分析に活用できるようになっている。プライバシーを保護しながら、予防や健康増進等にもデータが活用できるようになっている。

そうした背景から、すべての健保組合が健診・医療情報を分析したうえで、加入者の健康状態に即したより効果的・効率的な保健事業を行うべく、「データヘルス計画」を2015年度から策定、実行し始めた。加えて国民の健康づくりを推進するため、経済団体や医療団体、保険者等の民間組織や自治体が連携し、行政の全面的な支援の下、実効的な活動を行うために組織された活動体として、日本健康会議が2015年7月に発足したのである。

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