「東京ばな奈」の本社は無類の石好きが建てた 「世界各地の石」が集う、夢のビルの正体

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2階のカフェ「銀座ぶどうの木」へ続く外階段も、石に囲まれた空間

24種の石の中には、「シエラホワイト」や「ヴァーミリオン」など、貴重な石も多く用いられている。その石を魅力的に見せるため、外壁で使う石の組み合わせには試行錯誤したという。「割ったままの風合いを残した『割肌』や、表面に炎を当てて仕上げる『ジェット&ポリッシュ』、丁場からの採掘跡が残る『背板』など、石は仕上げ方によって表情が大きく変わります。それらを組み合わせて表情を出していきました」と鹿野さん。文京区にある矢橋大理石東京支店の駐車場で、石同士を何回も組み合わせて並べ、最良の見え方を探っていった。

「社長は、ある1点を除いて、ほぼ私たちに石の使い方を一任してくださった。プレッシャーではありましたが、非常にありがたかったです」。

「アフリカンレッド」を磨き仕上げで使ってくれ

その、社長のたった1点のリクエストとは、赤い御影石の「アフリカンレッド」を「磨き仕上げで使う」こと。

外壁デザインの検討用に、実際の石を使用してつくったモックアップ

「『アフリカンレッド』を使った彫刻や建築を見るたびに、磨き上げないと、あの色、美しさ、魅力が出ないと感じていました。あれほどの深みのある表情を見せる石はめずらしい。御影石の中で唯一、磨けばどの石よりも綺麗になると思っています」。

このリクエストをふまえ、座STONEの外壁では「アフリカンレッド」と「リラブラジル」という石の一部が、本磨き仕上げになっている。つやめく赤い石の輝きは、路上から見上げてもすぐに確認できる。

じっくり眺めているだけでも楽しくなる、座STONE。銀座を訪れたときは、このビルと石を眺めに、西五番街へ足を運んでみよう。

浦島 茂世 美術ライター

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うらしま もよ / Moyo Urashima

美術や街、旅を中心に執筆。All About美術館ガイド。著書に『東京のちいさな美術館めぐり』『猫と藤田嗣治』など。

 

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