小学校で「道徳の授業」はどう進められるのか 授業は先生と子どもが一緒に考え学ぶ時間だ

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道徳授業の現場では、教師たちの模索が続いているという。写真は本文とは関係ありません(写真:Greyscale/PIXTA)  
小学校で道徳が必修となって早5カ月が経とうとしている。必修化の決定前には「道徳の教科化は戦前の国家主義への回帰だ」などと批判する声があった。実際、道徳の授業はどのように展開され、子どもたちはどんな反応を示しているのか。そして、現場で指導に当たる教師は、どのように授業に臨み、評価しているのか。中野区立塔山小学校(東京都)の幸阪芽吹指導教諭が解説する。

今年度から、小学校では道徳の時間が「道徳科」として教科となった。実際の現場では、どのように授業が行われ、何が大切にされているのだろうか。

道徳科の目標は、道徳的諸価値を理解することが基となる。「努力」を例に考えると、以下のようになる。

努力をすることは、人としてよりよく生きていくうえで大切である(価値理解)
努力をし続けることはそう簡単にできるものではない(人間理解)
努力ができたりできなかったりするときの感じ方、考え方は多様である(他者理解)

これらを基に、自らの経験やそのときの感じ方、考え方を振り返りながら自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習が道徳科である。そして、道徳科の授業を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てるのである。

先生と子どもはどうやり取りするのか

教科化に伴い、道徳科は年間35時間(小学校1年生は34時間)行われる。

たとえば、「相互理解、寛容」の授業では、はじめに「相手と自分の考えが異なったとき、何を大切にしたらよいか」という課題を提示する。「相手と自分の考えが異なるとき」は、子どもたちにとっては、日常の生活の中で経験しているものであり、自分とのかかわりで考えやすい。教師はあらかじめ、子どもたちにとって身近な課題となるよう発問を考える。

次に、教科書の教材を読み話し合う。ここでは、登場人物の気持ちや起きている出来事などについて全体で考えていく。

その際、教師の発問として「○○(登場人物)は、どのような思いからこの行動をとったのか」「○○(登場人物)の気持ちを支えていたものは何か」など多様にある。子どもたちは自分の経験や思いを基に、そのときの登場人物の気持ちを考え“相互理解、寛容”について話し合う。

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