トルコリラで「騙された」という日本人の甘え 売る側も問題だが表面利回りしか見ていない

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中野:新興国通貨が暴落する時のパターンって、大体決まっていて、外貨建て債務の額が、外貨準備高に比べて高い国の通貨が売られます。たとえば、ドル建てで調達している国の通貨が20%下落すると、自国通貨建ての返済負担が20%増えます。こうして債務返済負担がどんどん重くなり、国の財政状況がますます悪化。それにともない、さらにその国の通貨が売られるという悪循環に陥ります。一度、こうした負のスパイラルに陥った通貨は、なかなか復活しません。インドネシアやフィリピンなどは、トルコの影響を受ける恐れがあるのではないかと見ています。

投資は「勝つか、学ぶか」が大事

藤野:こうした状況を見て思うのは、当たり前といえば当たり前のことなのですが、知らないものに投資してはいけないということです。商品の仕組みを理解していて、どのようなマーケットリスクがあるのかを把握していれば、仮に損失を被ったとしても、対策を講じることができるし、反省もできます。

でも、今回のトルコリラ暴落で大損して慌てている人は、恐らく商品の仕組みを理解せずに購入したのでしょう。初めから商品の仕組みがわかっていて、マーケットリスクも把握できていれば、そもそも大金を投入することはなかったでしょうし、今回のような事態に直面したとしても、「想定内のリスク」ということで、慌てることにはならなかったと思います。

投資は「勝つか、学ぶか」が大事です。勝てれば御の字ですし、たとえ負けたとしても、それによって学ぶことができれば、投資家として成長できます。学ぶためには投資先について「知っていること」が大事。いちばんダメなのは、知らないものに投資して「勝つか負けるか」という状況にしてしまうことです。これではギャンブルと何も変わりません。

企業価値だけでなく、物事の本質を見極める力がある。「草食投資隊」が個人投資家から支持されている理由はここにある(左からセゾン投信の中野晴啓社長、コモンズ投信の渋澤健会長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼CIO)(撮影:今井康一)

渋澤:現預金のみで資産を持っている人は、何も学べないということですね。今回、トルコリラでやられた人は、せめて今回の失敗から学んでもらいたいと思います。ただ、失敗して学ぶにしても、大金を投じて大損を被ったら、高い勉強代を払うことになります。勉強代は、できるだけ少額で抑えたいところですから、リスクの高いものにチャレンジする時は、少額資金で行うのが良いでしょう。

中野:ちょっと厳しい言い方になるのですが、自分で考えない人は資産運用に向いていません。損をすると、すぐ「アンタらに騙された」とクレームを付ける人がいるのですが、この手の人はいつまで経っても学べません。たとえば「通貨選択型ファンドのトルコリラ・コース」などという商品は、売り方が非常に際どかったのは事実ですが、少なくとも法令上は詐欺ではないのだから、やはり買う側も商品の仕組み、想定されるマーケットリスクを考えて、自分で買うか買わないかを判断することが大事だと思います。

草食投資隊 渋澤 健、中野晴啓、藤野英人

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そうしょくとうしたい

コモンズ投信会長・渋澤 健、セゾン投信社長・中野晴啓、レオス・キャピタルワークス社長CIOの藤野英人の3氏で結成。根底には、「長期投資を根づかせたい」という3人の熱い思いがある。「草食投資隊」という名前は、投資=肉食系というイメージが一見つきまとうが、本質は違うのではないか、という3人の共通の考えによる。

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