面接官を依頼する人たちに対し、自社の求める人材像や、面接で特にチェックすべきポイントを共有したとしても、「人」である以上は、どうしても学生との相性や好き嫌いが影響してしまう。面接官によって、面接の合否結果が全く変わらない企業など、まずないと言っていいだろう。つまり公平性を担保できている企業などないということだ。
だが、AIを活用すれば、話は別。AIの判定基準は、好き嫌いや相性に影響されることはないので、人間が面接するよりも公平な結果が期待できる。公平性の担保のほか、学生にとってはいつでもどこからでも動画による面接受験が可能になるため、特に地方の学生は経済的・時間的負担が大きく軽減され、企業にとっても面接時間や面接官の調整が不要になる。AI面接導入のメリットは少なくない。
しかし、6月に本コーナー「就活生が嫌がる『AIによる採用』導入は進むか」で記したように、AI面接に否定的な学生は少なくない。志望していた企業の選考がAI面接であるとわかったら、4割の学生は応募意欲が減退し、そのうち4分の1の学生は応募自体を取りやめる、とまで回答している(HR総研/2018年6月調べ)。
海外では、名だたる企業もこぞって積極的に導入を進めているAI面接だが、日本の面接においては人物査定と同じくらい、応募者の動機形成や志望度向上の役割が求められている。企業側は、そこをどうケアするのか、合わせて考えておく必要があるだろう。
「御社だけ」じゃなかったの?
1年前のサマーインターンシップに始まり、就職ナビ・採用ホームページ、合同企業説明会、学内企業説明会、セミナー・会社説明会、エントリーシート、適性検査、そして面接・・・・・・。それまで積み上げてきたものが、最後の役員面接において、役員から学生へのちょっとした一言で、すべてが水の泡になることもありえる。
学生からの内定辞退だけで済めばまだ軽傷だろう。大手企業や有名企業ともなれば、ちょっとした発言が『週刊文春』をはじめマスメディアで叩かれたり、ネットで炎上したりしないかと、ハラハラドキドキものだ。髪の毛が抜けるほど気をもむ採用担当者の心情をうまく表現した作品。ちなみにこの作品は大手企業の採用担当者からの投稿である。
企業側は、応募学生に内定(内々定)を伝えた後、10月1日を待たずして、学生に内定承諾書の提出を求めることが多い。内定承諾書を提出すると、応募学生は、内定を出した企業と(卒業などの条件付き)労働契約を結んだことになる。企業側が学生に内定を出したことを証明するとともに、応募学生の入社意思を最終的に確認するための書類となる。
ただ、企業側からは正当な理由のない内定取り消しはできなくなる一方、学生に対しての法的拘束力は何もない。内定承諾書を提出したからと言って、内定辞退(入社辞退)ができなくなるわけではないのだ。
内定辞退をする場合、相当のコストや労力・手間をかけ採用活動をしてきた企業に対して多大な迷惑をかけることになるため、学生に対してある程度の心理的ハードルを設定する効果はある。だからこそ、学生はそれほど安易に、内定承諾書を提出することはない。それは理解できる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら