総合電機業界格付、各社の事業構造の進展や投資戦略によって影響は異なる《スタンダード&プアーズの業界展望》
半導体、HDD、携帯電話の収益回復には時間がかかる見通し
事業環境の悪化局面で、懸念されるのが、収益水準が低く、キャッシュフローの回収も十分ではないとみている半導体、HDD,携帯電話機の各事業である。取り巻く環境の悪化が続き、収益の回復が遅れそうなこれら3つの事業の比重が高い企業が、構造改革をうまく進められない場合には、全体の収益を押し下げる可能性が高いだろう。
半導体事業の短期的な回復は、現在の需給悪化と価格下落から考えて難しいと予想される。半導体のメモリーの技術革新は極めて早く、海外メーカーとの競争環境も非常に厳しい。需給バランスの変動から収益の変動も大きい。巨額の投資負担を継続する必要があるため、十分な資金を回収していないケースが多い。NAND型フラッシュメモリーは、競合各社の生産体制が大幅に増強されてきた一方で、最終製品である携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラのSDカードなど需要の伸びが低迷しているため、供給過剰状況から価格の下落が長期化する懸念が高まっている。DRAMの市況は、パソコン用需要の低迷や携帯電話販売の伸び悩みを背景に、ここ数カ月で一段と悪化している。
システムLSIでは、すでに過剰供給状態が続いている。今後自動車向けや、ゲーム機向けなどの需要鈍化が長期化する懸念が高まるなか、価格下落も続く見通しである。NAND型フラッシュメモリーでは、事業環境の悪化を背景に、韓サムスン電子が東芝の重要な提携先である米サンディスク社(B/安定的/--)の買収を模索していたが、いったん取り下げとなっている。しかしながら、今後事業再編の動きが再開する可能性もあるため、先行き不透明感は高まっていると考えている。
HDD(ハードディスク駆動装置)では、業界上位の海外2社が市場シェアの60%程度を占めており、3位以下の国内各社の競争環境は厳しい。市場の需要予測は増加見通しであるが、最終製品であるデジタル家電などの需要の鈍化傾向が鮮明となってきており、需給バランスの悪化に伴い価格下落傾向は続く見通しである。
携帯電話機では、通信各社が順次導入した割賦販売方式の普及で、買い換え需要が急減し、長期的にも市場の伸びが鈍化する懸念が急速に高まっている。通信会社主導により継続的な新技術の開発を求められることから投資負担は大きい一方、ユーザーの買い替えサイクルの長期化により投資の回収期間が長くなるため、シェア上位のメーカー以外では、今後利益を確保することはさらに厳しくなると考えている。