「ドイツ人は残業しない」説の大いなる誤解 みんなが休暇1カ月取っても回る本当の意味

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ドイツでそういうことが起こらないのは、客を含めたみんなが「お互い様」だと諦めている、割り切っているからにすぎません。自分が休む権利を行使するからこそ、他人が休んでいることに理解を示す。それだけであって、休暇を取る人ばかりでも問題なく、いつもと同じように仕事が進むなんてことはないのです。いてもいなくてもいいような人であれば、企業はその人を雇う意味がないのですから。

日本は休みづらいが便利な国

日本は労働者が休みづらい国です。その代わり、いつでも便利です。担当者がいるし、店は開いている。ドイツは労働者が休みやすいけれども、不便なことがたくさんあります。

自分もまわりも休めないが便利な日本。自分もまわりも休むが不便なドイツ。日本とドイツの働き方の差は、どこに価値を置くかのちがいです。

自分は休むけれどまわりは休まず働いている便利な社会などありません。休暇が取れる国をうらやむのであれば、それだけの不便さを受け入れる覚悟が必要になります。

『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

すべてがうまくいっている理想郷など、どこにも存在しません。いいところがあれば当然、悪いところもあります。たしかにドイツは労働者の権利に敏感で労働組合の影響力も強いですが、必要に応じて残業する人はいますし、それが無給であることもあります。たしかにバカンスには行けますが、そのぶん不便になります。

そういった背景を無視して一部分だけを過剰に美化して、ありもしない「理想の働き方」を追い求めるのはちょっとちがうんじゃないか、と思ってしまいます。

どこかの国を見習うならばその背景や問題点を見落としてはならないですし、その背景があまりにも違いすぎている場合、見習うよりも日本に合った改善策を考えたほうが現実的なのではないか、というのが率直な気持ちです。

雨宮 紫苑 フリーライター

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あまみや しおん / Shion Amamiya

1991年、神奈川県生まれ。立教大学在学中にドイツで1年間の交換留学を経験。大学卒業後再び渡独。ワーキングホリデーを経て現地の大学へ入学し、現在フリーライターとして活動中。日独比較や外から見た日本など、海外在住者の視点で多数の記事を寄稿している。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。

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