「ドイツ人は残業しない」説の大いなる誤解 みんなが休暇1カ月取っても回る本当の意味

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BAuA(Bundesanstalt für Arbeitsschutz und Arbeitsmedizin)の統計では、フルタイム勤務者は平均して週43.5時間働いていることになっています。さらに内訳を見ると週に48時間から59時間働いている人が13%、60時間以上が4%となっているので、単純計算でだいたい5人に1人は週48時間以上働いていることになります。

残業時間でいえば、フルタイムの男性労働者のうち7割は週の残業が5時間以下ですが、19%は5時間から10時間、11%が10時間以上残業しています(女性だとほんの少し残業時間が短くなります)。つまり、5人に1人は月20~40時間、10人に1人は月40時間以上の残業をしている計算なんです。

もちろん、すべての残業に確実に残業代が支払われているわけではありません。

出世したければ残業もする

いくら「ドイツだから」といっても、終わらせなくてはいけない仕事があるのにみんながみんな仕事を放り投げて家に帰るはずがありません。

確かに、「わたしは帰ります」と権利を主張する人は日本よりもいますし、実際に仕事を放り投げて定時帰宅することも可能でしょう。でも問題は、そういう人が上司や会社に評価されるか、ということです。

そういう人を積極的に評価はしない、大事な仕事は任せたくない、というのは日本人に限った考え方ではありません。誰だって「終わらなかったけど帰ります」と言う人より、「頑張って終わらせます」と言う人と仕事をしたいと思うものですから。

そして、「稼ぎたい、昇進したい、上司に認められたい」という人は、積極的に残業してでも結果を残そうとします。その「熱意」と「成果」によって、出世街道への切符を手に入れるのです(もちろん学歴などの要素も絡んできますが)。これもまた多分、万国共通でしょう。成果を求められる管理職は、残業時間が多い傾向にあります。

ドイツを「実力主義の国」だと思っている人が多いようですが、それならば成果を出すために必死になる人がいて当然だということもまた、想像できるのです。

ただ、ドイツにおける残業というのは、あくまで自分やチームの仕事を終わらせるためにするものなので、付き合いや理不尽な要求によるものは少ない、という側面はあるかもしれません。

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